研究課題/領域番号 |
25304002
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研究機関 | ミュージアムパーク茨城県自然博物館 |
研究代表者 |
山崎 晃司 ミュージアムパーク茨城県自然博物館, その他部局等, 研究員 (40568424)
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研究分担者 |
後藤 優介 公益財団法人立山カルデラ砂防博物館, その他部局等, その他 (20574312)
小池 伸介 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (40514865)
釣賀 一二三 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, その他部局等, 研究員 (50287794)
泉山 茂之 信州大学, 農学部, 教授 (60432176)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ツキノワグマ / ヒグマ / 種間関係 / ロシア / 保全生態 / シホテアリン |
研究実績の概要 |
クマ類の種間関係(inter-specific competition)に関する研究は極めて限られている。ロシア沿海地方には,ツキノワグマとヒグマが同所的に生息しており,種間関係の調査地として希有である。今回,ロシア科学院およびシホテ・アリン自然保護区管理事務所の研究者の全面的な協力と,技術革新によって運用可能となった調査機材を用いて,当該地区において,クマ類の生態と保全に関する初の研究を開始した。 国内でのツキノワグマ飼育個体を用いた機材の検証試験では,2個体のメス成獣に衛星首輪通信型の腹腔深部体温計および皮下埋込型心拍ロガーを装着した。調査地であるロシア沿海州シホテ・アリンには,大陸産の大型クマ類の捕獲が可能な特別製の4台の捕獲罠を苫小牧港からウラジオストク港経由で搬送して,捕獲予定地に設置を行った。試験運用では,ヒグマの誘因が確認され,捕獲に問題のないことが確認されている。また,ロシア国内からのイリジウム衛星の利用と,衛星首輪内蔵のVHF周波数使用の許可申請を,衛星首輪10台分について行った。 11月には,ロシア科学院地理学研究所主催(ウラジオストク市)の国際シンポジウム「International Scientific and Practical Conference “Distribution, Migration and other Movement of Wildlife”」において研究計画の発表と日本のクマ類の現状についての報告を行った。2月には,「日露隣接地域生態系保存協力プログラム推進協定」ワークショップ(日本国外務省主催・環境省共催:ハボロフスク市)において,本研究内容と,今後の課題についての発表を行い,ロシア側関係機関への周知と協力を仰いだ。なお,衛星首輪10台は,複雑な書類事務の末,ようやく3月下旬にロシアに向けて生産国より出荷された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イリジウム通信型首輪のロシア側の輸入手続きが遅延したため,学術捕獲の年度内の実現は不可能となった。これは,通関手続きに関する書類作成についての責任分担に関し,製造元(ドイツ側)とロシア側の見解が分かれたことが大きな理由である。しかし,年度末に製造元からの出荷がようやく完了して,27年度早期には調査地に納品される予定である。そのため,27年度夏期に捕獲作業を開始することにより,作業の遅延はある程度挽回できる見込みである。 また,カメラ内蔵のGPS首輪運用の試験として,奥多摩山地のツキノワグマ(オス成獣)に当該首輪(Lotek社製,カナダ)を装着したが,ハードウェアの不調と想像される原因により,広範囲の長期間の捜索にも関わらず,回収は出来ないままになっている。今後のカメラ首輪の運用は,予算的に難しくなっている。 ツキノワグマの国内飼育個体を用いた機材の運用試験では,1個体については深部体温計に不調があり計測が停止し,また試験個体の急激な体重増加により,一時的に首輪を取り外す措置を執った。
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今後の研究の推進方策 |
イリジウム通信型首輪が納品された際は,現地を訪問して,機材の動作確認を直ちに行う予定である。 その後,すでに4台の罠は捕獲予定地に設置されていることから,急ぎ学術捕獲を開始して,当初の予定に沿ったイリジウム首輪の装着をツキノワグマ,ヒグマ双方に実施する予定である。 飼育実験個体からは,腹腔深層体温計および皮下埋込型心拍ロガーからのデータを回収して,その解析を始める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
衛星首輪の調達が,輸入に必要な書類手続きの部分で難航したため大幅に遅延し,26年度中の入手と運用が実現しなかった。そのために,クマ類の学術捕獲を伴う現地調査が実施できず,そのために計上していた旅費,人件費(現地調査補助など),罠設置にかかる消耗品,生理データロガー購入費,衛星首輪の通信費などの執行が出来ず,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
衛星首輪は26年度末に生産国から出荷されており,通関後に,27年度の早期に現地に配送予定である。そのため,27年度には,26年度に計上されていたにもかかわらず執行できなかった,旅費,人件費(現地調査補助など),罠設置にかかる消耗品,生理データロガー購入費,衛星首輪の通信費,さらに現地で追加製作する罠の製作費などに使用する予定である。
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