研究課題/領域番号 |
25304006
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中山 二郎 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40217930)
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研究分担者 |
清原 千香子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00169963)
佐藤 匡央 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90294909)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / 次世代シーケンサー / 16S rRNA遺伝子 / アジア / 食と健康 / 小児 / 加齢 / 乳幼児 |
研究概要 |
多民族が混在するアジアは、ユニークで健康効果の高い食文化の宝庫であり、「食と体と健康」の疫学フィールドとして注目される。そこで、我々は、アジア諸国・計10ヶ国(中国・インドネシア・日本・韓国・マレーシア・モンゴル・フィリピン・シンガポール・台湾・タイ)の研究グループと共同で、アジア各地域における食と腸内細菌叢と健康状態について、詳細かつ網羅的に調査している。 まず、被験者を4つの年齢層グループ(①幼年期0~4歳、②少年期7~11歳、③壮年期20~40歳、④高年期70歳以上)に分け、各国各グループ30名を目標に、食生活習慣と健康状態をアンケート調査し、また糞便細菌叢を次世代シーケンサーを用いた細菌16SribosomalRNA遺伝子の大量配列解析によりプロファイル化した。 ②については、7ヶ国の調査を終了した。その結果、アジア児童の腸内フローラは、中国、日本、台湾の児童に多い、ビフィズス菌・バクテロイデスの多いBB型とプレボテラ属細菌の多いP型に大きく分けられることが示された。同時に、各国特有の細菌叢の特徴も確認された。特に、日本の児童は、大腸菌やウェルシュ菌などの非衛生の指標となるような細菌の存在量が少なく、全体的にも多様性が乏しい傾向にあった。また、日本と韓国の児童の細菌叢は高い類似度を示し、国内の児童間と同等の類似度を示した。 ③と④については、5ヶ国のサンプリングと糞便細菌叢解析を終了した。各国の細菌叢の特徴は、②で見られたものと同様であったが、傾向は年齢とともに弱くなる傾向にあった。②から④を各国ごとに合わせて解析すると、年齢とともにビフィズス菌が減少し、大腸菌が増加する傾向がすべての国で確認された。 今後、これらの国間あるいは年齢間での細菌叢の違いが何に起因するものか要因を調査し、さらにこの異なる腸内細菌叢が宿主に与える影響についても調べていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の本研究で計画している、10ヶ国、4つの年齢層グループ(①幼年期0~4歳、②少年期7~11歳、③壮年期20~40歳、④高年期70歳以上)、各国各グループ30名からのサンプリングと解析のうち、①を除いて半数以上が終了した。 ①については、各国の新生児20名ずつを生後3年間にわたり追跡することを計画しているが、平成25年度は、各国において倫理委員会の承認を得て、サンプリングコホートを準備した。平成26年度から逐次、新規に出産する両親のインフォームドコンセントを得て、サンプリングと分析を行っていく。 以上から、本研究計画はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、10ヶ国、4つの年齢層グループ(①幼年期0~4歳、②少年期7~11歳、③壮年期20~40歳、④高年期70歳以上)、各国各グループ30名からのサンプリングと解析を進行させる。②~④については、26年度におよそ終了させる。①については、可能な限り多くの被験者を募り、サンプリングと解析を進展させる。 ②~④においては、アンケートデータを基にした食要因分析が遅れているので、26年度は注力する。特に、アジア人の2つのエンテロタイプを決定する要因解析に注力したいと考えている。 加齢と腸内細菌叢の関連性について、これまでの研究により示唆されるデータが得られたので、今後、さらに腸内細菌叢が健康に与える影響も含めて解析を進展させたいと考えている。 腸内細菌叢の解析法について、ロッシュ社の454ゲノムシーケンサーに代わり、より低コストで解析可能なイルミナ社のMiSeqによる解析が可能となったので、その有効性を早急に検討し、有効性が担保できるようであれば、MiSeqによる解析システムに移行し、サンプル数あたりの解析リード数を増やし、より詳細で精度の高いデータを得たいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
アジア10ヶ国の乳幼児の腸内細菌叢のサンプリングが遅延しており、当初計画していた600サンプル分の解析、約200万円分を次年度に繰り越すことになった。 平成25年度に計画していたアジア10ヶ国の乳幼児600サンプル分の細菌叢解析、約200万円分を26年度に行う。
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