研究実績の概要 |
ナシ属(Pyrus)は、西に向かって発展したセイヨウナシ、東に向かい中国・日本で発展したチュウゴクナシ、ニホンナシの3つに大きく分類される。これらの3種の間には果形や果実サイズ等の外観や食味、栽培特性等、多くの形質に違いが認められている。特に起源地から西への伝播において、起源地である中国西南部から栽培化されたヨーロッパでその途中地域の野生および半野生ナシの調査を行い、ニホンナシへの新規機能性果実形質の付加、病害抵抗性の導入に資するための遺伝資源評価を行うことを目的として研究を行った。今年度では, ナシ属植物の分化, 栽培化において重要な役割を担う遺伝子の探索を目的とし, まず世界各地の栽培種・半栽培種・野生種を含む40系統を用いて, 祖先種に近いとされるホクシマメナシで発現が認められ, 栽培種で発現が認められない可能性のある遺伝子について, ゲノムのPCR解析を行った. その結果, 約70%のマーカーで多型が認められ, そのうち約3割が断片長多型, 約5割が欠失多型, 残りが両方を含む多型であった. さらに, 野生種14種を含む26系統の果肉のポリフェノール含量の分析を行った. クロロゲン酸, 3, 5-ジカフェオイルキナ酸, アルブチンなどの含量は種間・個体間で大きな差が見られた. 特に化粧品などに含まれるアルブチンの含量については, 朝鮮半島に分布するP. faurieiにおいて最も高く, 最も低いP. syriacaと比較して約450倍の差が見られた.今後は, 使用する種やマーカーをさらに増やして実験を行い, さらなる考察をしていく必要がある.
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