研究課題/領域番号 |
25304008
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村上 貴弘 九州大学, 持続可能な社会のための決断科学センター, 准教授 (40374706)
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研究分担者 |
東 正剛 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (90133777)
坂本 洋典 玉川大学, 付置研究所, 研究員 (70573624)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 音声コミュニケーション / 進化 / アリ / SEM |
研究実績の概要 |
今年度は、アリにおける音声コミュニケーションの実態を把握した上で、野外でのプレイバック実験や操作実験を中心にデータを収集した。それらの成果をもとにオーストラリアで開催されたInternational Union for the Study of Social Insect, International Congress, Cairns(15 July, 2014)にて成果発表を行った。 音声コミュニケーションの進化を明らかにするためにオーストラリア南部のプーチェラで、もっとも原始的なアリ類といわれているNothomyrmecia(アカツキアリ)を採集し、その音声を録音した。その結果、アカツキアリも音声を発していることを世界で初めて確認した。このことで、ハチとの共通祖先から分化した直後に音声をコミュニケーションツールとして進化させたことが示唆された。 実験室内での操作実験では、カドフシアリやシワクシケアリの発音器官を接着剤で固定し、発音できなくしたあとの行動をビデオ撮影で記録した。その結果、これまでハキリアリで観察したように、発音器官の固定による影響の方が、フェロモン分泌を制限する処理よりも行動に大きな影響を与えることが示唆された。道しるべフェロモンのみで最短ルート探索などのモデルが構築されているが、今後、もう一つのパラメータが増えるためさらに複雑な情報処理が可能になるものと考えられる。 野外での音声プレイバック実験は2015年2月にパナマ共和国ソベラニア国立公園で行った。調査対象種はハキリアリAtta colombicaを用いた。あらかじめ録音した「葉を切る音」、「女王の警戒音」、「肉食アリのパナポネラの警戒音」をトレイル上で高性能小型スピーカーで再生し、行動の変化を記録した。その結果、底質がコンクリートや木の場合は、音声が行動を変化させることが明らかになった。人為的に音声を用いてアリの行動を野外で変化させることができたのは世界初である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の国際学会での発表、論文投稿と採用など、順調に進んでいる。また、海外での採集・観察・録音・プレイバック実験が順調に進展しており、特段問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られたデータに加え、今年度は発音器官のSEM画像データと感知器官の切片標本作製・観察を行い、アリにおける発音・音声認識のPhysicalな部分のデータを収集する予定である。これらのデータを統合し、よりインパクトの高い論文を作成し今年度中に投稿する予定である。
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