研究課題/領域番号 |
25304008
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村上 貴弘 九州大学, 持続可能な社会のための決断科学センター, 准教授 (40374706)
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研究分担者 |
東 正剛 北海道大学, 地球環境科学研究科, 名誉教授 (90133777)
坂本 洋典 玉川大学, 脳科学研究所, 研究員 (70573624)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 音声コミュニケーション / アリ類 / 菌食アリ / SEM |
研究実績の概要 |
最終年度は、アリ類における音声コミュニケーションの最終的なデータ収集とその解析、および論文作成を中心に行った。特に注力したのは菌食アリ6属7種である。音声データの録音と詳細な解析、SEM画像による発音器の撮影および発音部分のサイズ、スリップ数、操作実験による音声コミュニケーションと化学コミュニケーションの重要度の違いを明らかにした。 まず、音声データだが、6属7種の菌食アリの中でももっとも進化段階の高いハキリアリでは、前段階で14パターンの音声を判別していたが、今回の解析からその倍以上の30タイプの音声が統計的有意差を持って検出された。それに対し、進化段階が下がるにつれて、音のパターン数は減少し、もっともbasalなグループでは5-6タイプの音のみ検出された。また、音声を発する頻度もbasalなグループは頻度が低く、advancedなグループでは頻度が高い傾向にあった。 発音器のSEM画像による構造解析では、発音器の面積が進化段階とリンクして連続的に大きくなるのに対して、スリップ数はもっとも進化的なハキリアリと2番目に進化的なAcromyrmex属とでは明確な違いがあり、この部分に音声コミュニケーションの複雑さを生み出す鍵となるファクターがあると考えられた。 操作実験の結果から、音声を遮断したグループでは、統計的に有意に菌園サイズが減少し、菌園上にいる個体数、廃棄行動、掘削行動も有意に減少した。これらのことから、高度に社会を進化させたハキリアリでは、音声によるコミュニケーションが菌園の維持にとって化学コミュニケーションとは異なる部分を有意に支配し、最終的な菌園の維持に有効に機能していることが示唆された。 これらのデータから、アリ類における音声コミュニケーションの進化をとりまとめ、現在論文を執筆している。
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