研究実績の概要 |
オホーツク海北部のマガダン、およびその周辺海域において、2016年7月に潜水をともなう植生調査を行った。調査・採集場所はVeselaya Bay内外の2か所(I: 59.28N, 150.55E; II: 59.27N, 150.56E)とSvetlaya Bayの1か所(III: 59.27N, 150.46E)、またNedorazumeniya Island沿岸の1か所(IV: 59.36N, 150.25E)とし、調査内容はこれまでの調査に準じた。 対象海域においてコンブ類は水深12m程度まで深度別に群落を構成していたが、水深6m付近には見られず、多数のウニが生息していた。今回、採取されたコンブ類は6種で、他地域では見られなかったLaminaria appressirhizaやL. inclinatorhizaが含まれていた。また、地域固有種であるTauya basicrassaの生育も確認され、サイトIとIVの水深9m付近に小規模群落(2.5個体/m2)を形成していた。分子系統解析を行ったところ、rDNA領域の塩基配列比較においてTauyaはSaccharinaと単系統となった。また、2008年にマガダンで得られた種名不明な藻体の配列(rDNA, RuBisCo spacer, COI)がT. basicrassaの配列と一致し、更に核染色による染色体観察から、藻体は本種の単為発生半数体であることがわかった。 海藻フロラの調査では6回の採集を行い、緑藻8種、褐藻10種、紅藻25種を採集・同定し、押し葉標本166点、シリカゲル標本103点を作製した。構成種は寒海性種が主で、潮間帯には褐藻Fucusが優占し、漸深帯にはコンブ類に加え、褐藻Cystoseira、紅藻Tichocarpus、Neoptilota、Odonthalia、Chondrusに属する種が繁茂していた。
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