研究課題/領域番号 |
25304011
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宗原 弘幸 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (80212249)
|
研究分担者 |
矢部 衛 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (80174572)
古屋 康則 岐阜大学, 教育学部, 教授 (30273113)
阿部 拓三 北海道大学, 水産学部, 助教 (90639270)
安房田 智司 新潟大学, 自然科学系, 助教 (60569002)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | アラスカ / ウナラスカ島 / 北極海 / カジカ / アイナメ / 不凍タンパク質 / 寒冷適応 / アメリカ |
研究概要 |
本年度は、2つの調査を実施した。ひとつは6~8月にかけての北海道大学水産学部練習船おしょろ丸での北極海調査と不凍タンパク質の発現実験である。もうひとつは、3月に行ったアリューシャン列島ウナラスカ島での潜水による標本採集調査である。 1. 北極海調査 北海道大学練習船おしょろ丸は、国立極地研究所が推進する北極気候変動研究事業(Green Network of Excellence)の一環として、6~8月北極海で海洋観測と底引き網による底性生物採集調査を行った。本船には、研究分担者の阿部拓三が乗船しており、またGREENのメンバーとして本研究の研究協力者として大学院博士課程1年の山崎彩が参加し、チャクチ海と北極海で標本採集した。また、採集したツマグロシベリアカジカについては、船上で低温飼育下においての不凍タンパク質の発現を調べるための鰭、肝臓などのサンプルを持ち帰った。現在、それらのサンプルを分析中している。 2. ウナラスカ島での潜水調査 アリューシャン列島は、地理的に環北太平洋要素種群の沿岸性魚類がアラスカから極東に、あるいはその反対方向に分布拡大する過程の中間にあるばかりでなく、東側は氷期においても氷結しないなどリフュージとして機能するなど、極めて重要な役割を果たしたと考えられる。そこで東側にあるウナラスカ島にて3月10日間の潜水調査を行った。カジカ類を中心に約20種150個体の魚類標本を採集した。現在、種査定が終わったところで、遺伝子解析は2年目以降に行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の進行状況が概ね順調と自己評価している理由は、年度当初予定していた2つの調査(6~8月にかけての北海道大学水産学部練習船おしょろ丸での北極海調査と不凍タンパク質の発現実験、および3月に行ったアリューシャン列島ウナラスカ島での潜水による標本採集調査)が実行できたことである。 北極海調査においては、国立極地研究所が推進する北極気候変動研究事業(Green Network of Excellence)の一環として、6~8月北極海で海洋観測と底引き網による底性生物採集調査を行い、研究協力者のおしょろ丸航海士阿部拓三と大学院博士課程1年の山崎彩がチャクチ海と北極海で標本採集できたこと。また、採集したツマグロシベリアカジカについては、船上で低温飼育下においての不凍タンパク質の発現を調べるための鰭、肝臓などのサンプルを持ち帰ることができたことである。さらに、ウナラスカ島での潜水調査においては、自然条件が厳しい季節の3月に、10日間の潜水調査を行うことができた。しかし、カジカ類を中心に約20種150個体の魚類標本を採集できたが、期待した以上の採集が出来ず、その点においてより高い評価ができなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、7月にカムチャッツカ半島での潜水調査を予定している。これは、自然条件が緩い季節に行うことで前年度よりも種、個体数において、より高い成果が伴う採集調査が期待できる。今後は以下の調査を予定している。 1. アリューシャン列島西域および中央域の潜水による標本採集調査 初年度にアリューシャン列島東域のウナラスカ島での調査を行ったので、今後は、ロシアから入り西域のコマンドルスキー諸島周辺での調査を実施し、さらにアリューシャン列島中部域のアミチツカ島でも同様の調査を行う。それぞれ2週間程度の調査であるが、これらの3つの調査で、アリューシャン列島の異なるハビタットをカバーしたい。調査に臨むにあたり、参加メンバーが各自が採集技術を向上させ、効率よく標本採集をしたい。 2. 不凍タンパク質の分析 これは、研究協力者の山崎彩の博士論文の骨格を成す部分である。昨年度までに収集したツマグロカジカ属を材料に、寒冷域に適応した魚類の分子レベルでの進化過程を解明する。また、本属以外にも北極海を含む寒帯域に進出したギスカジカ属およびオニカジカ属と温帯域にとどまっているニジカジカグループを比較することで、寒冷域への分子レベルの適応の理解を深める予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
3月に海外調査を行った。その際に使用した経費の一部が会計決算上、翌年の26年度扱いになったためである。 上記に記したように、3月に海外調査を行ったため、その際に使用した経費の一部が会計決算上、翌年の26年度扱いになった。
|