研究課題/領域番号 |
25304012
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野崎 久義 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40250104)
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研究分担者 |
関本 弘之 日本女子大学, 理学部, 教授 (20281652)
三角 修己 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90583625)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ボルボックス / 卵生殖 / 種分類 / 進化 / 多様性 |
研究実績の概要 |
Volvox capensisはボルボックス節(Volvox sect. Volvox)に分類され、本節は群体の細胞間に太い原形質連絡をもつことを特徴としており、他のボルボックスの節およびユードリナ・プレオドリナとは系統的に分離する。V. capensis は1933年の原記載以来、南アフリカからの報告しかない種であり、Starr et al. (1980, PNAS) は南アフリカ産の培養株を観察している。我々はアメリカ合衆国モンタナ州より採取したサンプルから確立した培養株の無性群体と雌雄同体の有性群体の形態から,本株を V. capensis と同定した。しかし、今回の米国産の株の雌雄同体の有性群体の精子束の数が少ないことと配偶子の接合様式がこれまでの南アフリカ産のV. capensisの報告と異なった。今回の株のITS-2核rDNA の配列は南アフリカ産の V. capensisと1塩基が異なるだけであり、生殖様式の速い進化が推測された。 ボルボックス属は形態的に多様でSmith (1944, Trans. Am. Microscop. Soc.) は約20種を4個の形態的サブグループ(節)に分類している。分子系統解析では4個の分離した単系統群に分割されるが (Nozaki 2003, Biologia)、上記の節の分類とは矛盾する点があった。最近我々はこれら4単系統群を4節に再分類した。 タイ国の現地調査を実施した結果 2 mm 以上の無性球体を形成するボルボックスの1種の培養株を確立した。Smith (1944)によれば 2mm 以上の無性球体を形成するのは3種であったが、今回のタイのボルボックスは球体の細胞質連絡が細い点で基本的にこれら3種とは異なることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モンタナ産のボルボックスとボルボックス属の節レベルの新分類体系の論文が出版された。また、分類学的に興味深いタイ産の株を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
タイ産株の分類学的研究を実施する。更にアジアを中心に現地調査を実施し、多くの培養株を確立し分類学的同定を実施する。これまでの材料の解像度の高い系統樹を構築し、ボルボッスと卵生殖の進化の道筋を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
中国の現地調査を予定していたが、現地武漢のカウンターパートから淡水域は殆どすべて富栄養化しており、ボルボックスは生育していないとの情報を得たので、次年度別の地域を調査することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
台湾およびドイツのカウンターパートと連絡をしてボルボックスの現地調査に使用する予定である。
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