研究課題/領域番号 |
25304012
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野崎 久義 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40250104)
|
研究分担者 |
関本 弘之 日本女子大学, 理学部, 教授 (20281652)
三角 修己 山口大学, 創成科学研究科, 准教授 (90583625)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | Volvox / 種分類 / 多様性 / 進化 / 有性生殖 / 卵生殖 / Pleodorina |
研究実績の概要 |
2鞭毛型の遊泳細胞が集合し、多細胞化したボルボックス系列の最も進化段階の高いものがボルボックス(Volvox)で、その直前がプレオドリナ(Pleodorina)と伝統的に考えられていた。ボルボックスは500以上の細胞をもち、非生殖細胞が球体の前端から後端までほぼ均一に分布しているが、プレオドリナは細胞数が200以下で非生殖細胞は球体の前半に通常分布する。世界各地から20種以上のボルボックスが記載されているが、種によっては一部の地域だけから報告されている(Smith 1944, Trans. Am. Microsc. Soc.; Nozaki et al. 2015, PLOS ONE)。一方、近年の経済発展は世界各地で淡水域の環境破壊をもたらし、過去にボルボックスが出現した淡水域でも現在では富栄養化しており生育は認められない場合がある(未発表)。従って、現時点でボルボックスの生育が認められそうな淡水域の情報を世界各地の研究者から収集し、現場に赴き本生物群の培養株を確立して次世代の分類・多様性生物学分野に伝える必要がある。本年度は、タイ王国の共同研究者の現地情報と現地での採集協力の結果得られた2種について研究した。1種目はコンケン県のラムサールサイトの沼地で採集されたもので、培養してみると最大直径2 mmを超えるボルボックスにおける最大級の球体を形成し、構成細胞は細い細胞質連絡をもつ。2種目はローイエット県の湖で採集され、通常のボルボックスと同様に球体の前端から後端まで非生殖細胞が均等に分布していたが、細胞数は200未満であった。前者はV. dissipatrixと同定された。一方、後者はPleodorina sphaerica という 1951以来報告のなかった種と同定された (Nozaki et al. 2017, Phycologia in press)。また、本年度は台湾を調査し、Volvox cartei が採取された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイ国産のVolvoxの祖先種と議論されていたPleodorina sphaerica がタイのサンプルから分離培養することに成功し、論文 (Nozaki et al. 2017, Phycologia in press) も出版されることになったたから。
|
今後の研究の推進方策 |
タイのサンプルにはいまだに種が不明のVolvox があったが、株の確立に失敗しており、再度タイに赴いてサンプルを採集し、株を確立する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
28年度にタイ国の現地調査を予定していたが、カウンターパートのコンケン大学 S. Athibai 博士の海外渡航等の理由から調査協力ができなくなり、計画を変更し、タイの現地調査を行わないこととした。また、8月予定のスウェーデンの現地調査もカウンターパートD. G.Angeler 博士のスウェーデン農業大学の学務の都合で、現地調査を行わないことにしたために未使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
タイのサンプルにはいまだに種が不明のVolvox があったが、株の確立に失敗しており、再度タイに赴いてサンプルを採集し、株を確立する。
|