研究実績の概要 |
本年度は、台湾の共同研究者の現地情報と現地での採集協力の結果得られた Volvox carteriについて研究した。 群体性ボルボックス目は多細胞化と有性生殖の進化のモデル生物群とされているが、多くの研究は Volvox carteri f. nagariensisと同定されている日本産のEve株、Adam株等を使用している(Starr 1969, Arch. Protistenk.; Kirk et al. 1999, Development; Ferris et al. 2010, Science)。本品種はインドのNagariを原産地としており(Iyengar 1933, J. Linn. Soc.Bot.)、日本以外の株に関してはインドのPoona産の株を用いた研究がある(Adams et al. 1990, Curr. Genet.)。形態分類学的にはVolvox carteriは6個の品種に分類されており、有性生殖の雄群体の形態が重要な識別 基準である(Nozaki 1988, Phycologia)。しかし、f. nagariensisに関しては日本産の有性生殖の情報しかなく(Starr 1969)、雄群体を構成する非生殖細胞と分裂して精子束となる生殖細胞(androgonidia)の比(S/A比)に変動がなく1:1であることを特徴としている(Nozaki 1988)。今回、核ITS領域の情報 からV. carteri f. nagariensisと同定されうる台湾産の33株を用いた研究を実施した。その結果、雄群体のS/A比は1:1->50:1であることが明らかになった。また、性特異的遺伝子(Ferris et al. 2010)に着目したゲノムPCRを実施した結果、メス特異的HMG1fを欠損している可能性のあるメス1株が明らかとなった (Nozaki et al. 2018, Botanical Studies in press)。また、本年度はタイ王国を調査した。
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