研究課題/領域番号 |
25304013
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 元己 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (00193524)
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研究分担者 |
神保 宇嗣 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究員(常勤) (10568281)
吉武 啓 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, 農業環境インベントリーセンター, 研究員(常勤) (50517662)
細矢 剛 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, グループ長 (60392536)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ブナ属 / 生物地理 / 共生系 / 昆虫 / 共生菌類 |
研究実績の概要 |
26年度は北米のアメリカブナを対象に、8月に米国アパラチア山地で調査を行った。アメリカブナの根・葉・樹皮の試料採取を行った。同時にアメリカブナを餌とするチョウ目、コウチュウ目、カメムシ目の昆虫の採集、アメリカブナの葉、枝、幹に寄生する菌類の採集を行った。これらのサンプルは仮同定後にDNAの抽出を行い、昆虫ではCOI、菌類では核 rDNAのITS領域の塩基配列決定を行った。 また、昨年度までに採取したヨーロッパ産および国内産の2種のブナ属植物の根サンプルより全DNAを抽出し、真菌特異的なプライマーを用いてInternal Transcribed Spacer (ITS)領域を増幅し、Ion PGM次世代シークエンサーを用いて網羅的に配列決定した。決定された配列を95%の閾値でoperational taxonomic unit (OTU)としてまとめた後、これら真菌の同定を行った。統計的な解析から、宿主植物の違いが、根における真菌群の構成に有意な違いを生み出すことが分かった。この違いの顕著な一例として、日本国内のブナ属と比較して、ヨーロッパブナの根においては多様な子菌が存在することが分かった。また、ブナ及びイヌブナは、ヨーロッパブナと比較してより多くのOTUを共有していた。さらに、同じ宿主植物においても、地理的変化及び季節変化が真菌の構成に有意な違いを及ぼすことが分かった。以上の結果から、比較的近縁の同属異種の植物間でも根に存在する真菌群には明確な違いがあること、また地理的及び季節的な差異が真菌の構成に有意な違いを与えることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
北米におけるサンプリングおよびその結果の解析は、メタゲノム解析を除き予定どおり進行した。27年度が暖冬のため、日本国内におけるメタゲノム解析用試料の最後のサンプリングを行う積雪期が1月ほど遅れたため、北米のサンプルと共に行うメタゲノム解析を年度内に終了することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
外部委託しているメタゲノム解析用のシークエンスデータが28年度の初めに届く予定であり、データが納入され次第、解析を行って本研究全体のまとめを行い、計画していた研究をすべて終了する。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度が暖冬のため、メタゲノム解析用試料の最後のサンプリングを行う積雪期が1月ほど遅れたため、外部委託によるメタゲノム解析の結果を年度内に受け取ることが不可能となり、次年度にこの解析を行うことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度の開始と共に、メタゲノム解析を行なうため、試薬代と解析費用を支出する(2,000千円)。そのデータを加えて最終的な研究結果を得て研究成果をまとめる。その結果は、学会で発表をするとともに論文にして公表する(旅費500千円, 出版費用100千円)。
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