研究課題
ヒトでは、1回の排卵で妊娠する確率は3割しかなく、夫婦の1割は不妊といわれている。また、発情が不明瞭で、妊娠の可能性のない時期にも性交を行う。同じヒト科に属するチンパンジーやボノボも、妊娠するまでに6回以上発情期をもち、合計数百回以上の交尾を行う。このようなヒト科に共通してみられる「なかなか妊娠しない」「妊娠にいたらない交尾を行う」といった性質は、強い負の自然淘汰圧をうけ、メスにとってよほど大きな利益がない限り進化しにくいと考えられる。本研究では、新しく考案した野生下での定量的ホルモン動態分析法を行動観察と組み合わせることにより、チンパンジーとボノボにおけるメスの繁殖生理と行動との関係を明らかにし、ヒト科のメスの「妊娠しにくさ」の進化を解明する。平成26年度は、橋本、古市、五百部、田代がウガンダ共和国で野生チンパンジーの調査をおこない、行動のデータと糞・尿試料の採集を行った。また、坂巻と研究協力者のリュがコンゴ民主共和国ワンバ地区で、野生ボノボの調査をおこない、行動のデータと糞・尿試料の採集を行った。さらに、霊長類研究所にて、研究協力者の毛利とリュが、これらの試料からホルモンを抽出、分析を行った。現在、これらのホルモン動態の分析結果から、新しく考案した野生下での定量的ホルモン動態分析法についてまとめ、論文を準備している。さらに、行動データを分析し、ボノボの発情状態とホルモン動態との関係について分析を進めているところである。
2: おおむね順調に進展している
ウガンダ共和国カリンズ森林における野生チンパンジーとコンゴ民主共和国の野生ボノボの調査を予定通り継続して行っている。糞・尿試料の採集も計画通り進んでいる。試料の採集方法も改良し、現在方法についてまとめを行っている。
計画調書の計画通り、今後も、ウガンダ共和国カリンズ森林の野生チンパンジーとコンゴ民主共和国の野生ボノボの現地調査により、糞・尿試料の最終およびチンパンジー/ボノボの行動のデータを集める。日本では、試料の分析を進めていく。方法論についてまとめ発表するとともに、行動とホルモン動態の関係についても、分析を進める。
試料をフィールドから持ち帰るのが、年度末に近かったため、今年度採集した試料の分析を平成27年度に回したことと、研究協力者のフィールド派遣を来年度に変更したため。
平成26年度に採集した試料の分析と研究協力者の派遣を行う。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) 図書 (2件)
Behaviour
巻: 152 ページ: 285-311
10.1163/1568539X-00003212
巻: 152 ページ: 425-460
doi: 10.1163/1568539X-00003226
Nature
巻: 513 ページ: 414-417
doi:10.1038/nature13727
Veterinary Microbiology
巻: 174 ページ: 186-194
doi:10.1016/j.vetmic.2014.08.032
Plos One
巻: 9 ページ: e114154
doi: 10.1371/journal.pone.0114154
Biological Conservation
巻: 170 ページ: 321–328
doi:10.1016/j.biocon.2013.12.033
人類学雑誌
巻: 122 ページ: 71-75
Oecologia
巻: 174 ページ: 1127-1137
10.1007/s00442-013-2863-9