研究課題/領域番号 |
25304019
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
橋本 千絵 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (40379011)
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研究分担者 |
古市 剛史 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (20212194)
五百部 裕 椙山女学園大学, 人間関係学部, 教授 (20252413)
坂巻 哲也 京都大学, 霊長類研究所, 研究員 (50402780)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 性の進化 / チンパンジー / ボノボ / 不妊 / 生殖ホルモン動態 / 流産 / カリンズ森林 / ワンバ |
研究実績の概要 |
ヒトでは、1回の排卵で妊娠する確率は3割しかなく、夫婦の1割は不妊といわれている。また、発情が不明瞭で、妊娠の可能性のない時期にも性交を行う。同じヒト科の属するチンパンジーやボノボも、妊娠するまでに6回以上発情期を持ち、合計数百回以上の交尾を行う。このようなヒト科に共通してみられる「なかなか妊娠しない」「妊娠に至らない交尾を行う」といった性質は、強い負の自然淘汰圧をうけ、メスにとってよほどの大きな利益がない限り進化しにくいと考えられる。本研究では、新しく考案した野生下での定量的ホルモン動態分析法を行動観察と組み合わせることにより、チンパンジーとボノボにおけるメスの繁殖生理と行動との関係を明らかにし、ヒト科のメスの「妊娠しにくさ」の進化を解明する。平成29年度は、古市と五百部がウガンダ共和国で野生チンパンジーの調査を行い、行動データと糞・尿試料の採集を行った。また、古市、橋本と坂巻がコンゴ民主共和国ワンバ地区で野生ボノボの調査を行い、行動データと尿試料を収集した。濾紙を用いた試料収集方法の他、固相抽出カラムによる試料収集を行い、効率等を調べた。さらに、霊長類研究所にて、研究協力者の毛利とリュが採集した糞・尿試料からホルモンを抽出、分析を行った。これらの結果から、野生チンパンジーやボノボでも初期流産がみられること、ボノボのホルモン動態と性皮腫脹に興味深い傾向があることが明らかになった。これらの結果を日本国内の学会で報告したほか、成果の一部を国際学術論文誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウガンダ共和国カリンズ森林における野生チンパンジーとコンゴ民主共和国ワンバ地区の野生ボノボの調査を予定通り継続して行い、糞・尿試料の採集および行動データの収集も計画通り進み、ホルモン動態の分析も順調に進んできた。さらに、これまでの分析で、明瞭な分析ができなかった試料のよりよい分析方法を予備的に試すことができ、新しい可能性が考えられるようになった。成果を学会での発表し、いろいろな反響を受けることができた。ただし、分析方法を新しくしたりしたため、若干分析が遅れたため、研究期間を延長した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度で研究費は修了したが、分析の残った試料があったため、研究期間を延長した。今後は、試料の分析と、行動データの分析を進めていく。2018年8月にケニアで行われる国際霊長類学会において、性ホルモンの試料収集方法および分析に関することと、本研究の結果を使った、チンパンジーにおけるメスの移籍に関する研究を発表する。現在、研究成果の一部を学術論文として投稿中であるが、引き続き他の部分に関しても論文をまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
ホルモン試料が年度末までかかって採取されたため、2018年度に抽出・分析する必要があるため
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