研究課題/領域番号 |
25304020
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
松村 博文 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (70209617)
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研究分担者 |
澤田 純明 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (10374943)
海部 陽介 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, グループ長 (20280521)
篠田 謙一 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 部長 (30131923)
山形 眞理子 金沢大学, 国際文化資源研究センター, 特任教授 (90409582)
久保田 慎二 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員 (00609901)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 人類学 / 解剖学 / 考古学 / ゲノム / 国際協力 |
研究実績の概要 |
広西壮族自治省の南寧市に位置する灰窯田遺跡(新石器時代前6000年前)の人骨を遺跡トレンチからすべて取り上げ、広西文物考古研究センターの李珍ならびに南寧市博物館のスタッフらの協力のもと、博物館収蔵施設において58体分の洗浄、復元、写真撮影、計測等の作業に従事した。また近接する同時期の鯉魚坡遺跡出土の39体の人骨についても同様の作業を実施した。頭骨形態と計測および形態所見は松村と海部が担当しデータを採取した。海部は高精度3次元レーザースキャナを持ち込み、埋葬状態での人骨の解剖学的3次元位置形態データと復元された頭骨の3次元データを収集した。篠田は歯をサンプリングしミトコンドリアDNAの解析をおこなっており、次年度へもこの分析は継続する。澤田は人骨の古病理学的データ所見を採取した。久保田と山形は、同時代で類似する埋葬様式を呈するベトナムのコンコンガ遺跡や中国桂林市の甑皮岩遺跡などとの考古学的比較研究をおこなった。まtた、研究協力者の深山、渡辺らとともに歯と四肢骨の形態データの採取も実施した。鯉魚坡遺跡については遺跡の現地調査をおこなうとともに、絶対年代が不明であるため、歯をサンプリングし、加速器分析研究所に依頼して年代測定をおこなった。その結果、7000年代前の数値が得られた。日本国内では今後の研究展開のための協議と発掘報告書刊行に向けた作業会をおこなった。人骨形態の予備的分析では、灰窯田遺跡と鯉魚坡遺跡は同系統の集団とみなされ、北東アジア人的特徴の強い現代の中国に住む人々とは系譜を大きく異にし、後期更新世に脱アフリカ南ユーラシアを経由したオーストラリア先住民やメラネシア人と同系のグループに属することが明らかになりつつあり、ユーラシアの人類史解明のためのきわめて貴重な資料となることが確実視されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人骨取り上げは完了し、順調に人骨の整理作業とデータ採取にとりかかっており、順調に計画は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
人骨の整理と分析は順調にすすめており、今後その成果を公表するための灰窯田遺跡と鯉魚坡遺跡の発掘報告書の出版に向けて、現地研究機関と協議をおこなっていくこととなる。また報告書とは別途に、学術誌への論文投稿掲載も企てていく必要がある。理化学的分析は人骨のコラーゲンの残存状況がさほど良くないなか、可能な限りミトコンドリアDNAの抽出を試みていく。絶対年代についても鯉魚坡遺跡の測定に成功したのは1点のみであるため、サンプル数を増すことにより、信頼性を増していくことが求められている。桂林市の甑皮岩遺跡やベトナムのコンコンガ遺跡など近隣地域の遺跡集団との人類学的考古学的関連性も明らかにしていく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺跡の絶対年代を推定するためAMS加速器放射性炭素による年代測定を試みているが、人骨のコラーゲン残存状態が良くないため、年代測定が可能であったのが1点のみであった。試料件数を増やすため分析を次年度に継続させる必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
遺跡の人骨の歯をサンプリングし、AMS加速器放射性炭素による年代測定をおこなう。
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