研究課題
中国広西の南寧市に位置する灰窯田遺跡および同区隆安県の鯉魚坡遺跡の出土遺物について各分野のデータ分析をおえた。遺伝子解析では、側頭骨内耳を分析用試料とした2例についてAPLP法によりハプログループを決定することができた。1例は灰窯田遺跡の試料のスンダランド由来とみなされるM7タイプ、他の1例は鯉魚坡の試料で現代アジア人に広範囲にみとめられるD4a4タイプであった。灰窯田遺跡の炭化植物を分析した結果、大量のカナリウムが検出された。放射性AMS炭素年代分析では、灰窯田が9000-8300年前、鯉魚坡遺跡が7000-7600年前の推定値が示され、予想をこえた古い遺跡であることが判明した。形態研究では頭骨の形態データからオーストラロパプア系集団との強い類似性が示された。目下3次元座標解析からの追証も試みている。古病理分野では歯牙病変を主にベトナムMan Bac遺跡などの新石器時代農耕民と比較し、歯周病の頻度が極めて少ないといった採集狩猟民的特徴がみいだされた。文化遺物の関係では、中国広西と周辺地域であるベトナム北部と中部で調査を行った。両地区は十万大山などの山脈で地理的に分断されるが、特にダブット文化期には叩目を持つ丸底釜形土器や埋葬方法、貝類の利用など多くの面で類似性が高く、極めて密な交流関係が示唆された。しかしダブットは6000年前と年代には大きな乖離があるためその解釈は今後の再検討課題として残された。埋葬様式では、坐葬や体肢の一部を切断するなどユニークな風習が認められていたが、さらなる検証の結果、灰窯田遺跡には再葬墓が含まれており、一次葬として風葬などによってミイラを作成していた可能性が浮かび上がった。本研究では斯様に当地域の完新世初頭ののユニークな採集狩猟民の実態を解明することができた。その成果は国立科学博物館モノグラフ47巻にオープンアクセス可能な媒体として出版した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Antiquity
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http://www.kahaku.go.jp/research/publication/monograph/v47.html
http://web.sapmed.ac.jp/anthropology/research/p899u400000000vo.html