研究課題
本研究の目的は、ベトナム・メコンデルタの非酸性硫酸塩土壌地域における水稲雨期作の減収要因を明らかにし、雨期作で発生する水稲の生育障害や登熟不良を抑制する対策技術を構築することである。平成27年度は前年度に引き続き、カントー市内の試験圃場において水稲の二期作(雨期作と乾期作)を実施した。品種は、現地の農家が広く使用する標準品種と酸性耐性品種を用いた。水管理は、慣行区、雨期作中干区、乾期作後湛水区の3処理とした。また、慣行区内に小処理区を設置して、土壌改良資材の効果を評価した。雨期作の籾収量は乾期作に比較して半分程度にまで低下した。収量低下の主な要因は一穂籾数の低下であった。雨期作では全乾物重と収穫指数がほぼ同等に低下しており、このことが収量の大きな低下をもたらしていた。雨期においては根表面への硫化鉄の沈着が顕著であるとともに、試薬を用いた硫化物反応が強い傾向にあった。また、ほぼ幼穂形成から登熟初期にあたる期間の気象条件と一穂籾数の関係を解析したところ、気温や最大風速とは負の相関関係、日射時間とは正の相関関係が認められた。これらの結果より、雨期作の収量の低下には土壌の還元障害(特に硫化水素)と気象要因(気温、風速、日射量)の両方が関与している可能性が示唆された。対策として、作期途中の中干は雨期作時の水田作土層の還元環境を改善するのに有効であった。また、乾期作を収穫した後の田面湛水は、雨期作初期の田面水や土壌間隙水の酸性化を緩和するのに効果的であった。しかし、これらの水処理と水稲収量の関係は明確ではなかった。この要因として、水管理の徹底が不十分であったことも考えられる。土壌改良資材と収量の関係も明瞭ではなかった。今後さらなる検証が必要となるが、これらの結果から土壌の還元環境を緩和する水管理技術として中干、酸性化を抑制する技術として乾期作収穫後の田面湛水が有効と考えられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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