研究課題/領域番号 |
25304030
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
堀之内 正博 島根大学, 汽水域研究センター, 准教授 (30346374)
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研究分担者 |
佐野 光彦 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (50178810)
山口 敦子 長崎大学, 水産学部, 教授 (10310658)
岡本 研 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (20160715)
加納 光樹 茨城大学, 広域水圏環境科学教育研究センター, 准教授 (00527723)
中村 洋平 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (60530483)
古満 啓介 長崎大学, 水産学部, 研究員 (30554266)
今 孝悦 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (40626868)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境修復 / 水産資源回復 / 海草藻場造成 / 動物群集 / タイ / 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
本研究課題はタイ沿岸域で海草藻場造成実験を行い、効率的に造成海草藻場動物群集の種多様性や個体密度を高めるためにはどうすればよいか明らかにすることを目的とする。 本研究期間には、前研究期間中に造成したEnhalus acoroides海草藻場と周囲の天然E. acoroides海草藻場、砂泥地の動物群集モニタリングを行った。造成海草藻場と天然海草藻場に共通して出現したのは47種(天然海草藻場魚種の77%)であり、その中には天然海草藻場を特徴づけるある種のベラ類や水産上重要種のフエフキダイ類などが含まれていた。また出現魚のほとんどが稚魚などの小型個体であった。これらのことから、適切にデザインされた造成海草藻場は時間はかかるものの天然海草藻場と同様の機能を果たすようになると考えられた。 また、前研究期間中に形成されたHalophila ovalis海草藻場でもモニタリングを行った。この海草藻場の魚類群集構造は周囲の砂泥地とは明確に異なっており、砂泥地ではほとんどみられないある種のフエフキダイ類などが多く出現した。餌の量は海草藻場でより多かったことなどから、これらは餌が多い等のメリットのため、海草藻場により多く出現するものと考えられた。一方、砂泥地により多く出現した種もいたが、これらは海草藻場の物理構造が巣穴を作る際あるいは餌を摂餌する際に障害となるため、海草藻場を好まない可能性が考えられた。以上の知見はH. ovalis海草藻場と砂泥地がそれぞれ独特の魚類群集を育むことを示すものである。したがって、ある地域の砂泥地がすべてH. ovalis海草藻場に遷移した場合、逆にH. ovalis海草藻場がすべて砂泥地になった場合、その地域全体の種多様性は低下してしまうであろう。すなわち砂泥地も含む様々なハビタットタイプが存在することにより、はじめて地域全体の多様性が高く保たれると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
期間前半に新たな実験のための海草藻場を造成した。しかし、モンスーン期の大嵐等により、これらの造成海草藻場の一部が破壊されてしまった。現在、海草苗の不足のため、完全には復旧できていない。
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今後の研究の推進方策 |
新たな海草藻場の造成および破壊された造成海草藻場の復旧を行う。現在、現地研究協力者の研究室において、造成/復旧に必要な海草苗の栽培の準備を行っているところである。また、これまでに造成した海草藻場および天然海草藻場、砂泥地における動物群集のモニタリングを継続し、知見を蓄積していく。これからも自然の攪乱等で造成海草藻場の破壊などがおこる可能性があるので、出来るだけ前倒しで研究を進めていく。なお、海草苗栽培技術についての室内実験も計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
倹約して使っていた結果、残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の購入にあてる。
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