研究課題
熱帯域の沿岸に広がるサンゴ礁に生息する魚類は、水温や日長の変動が少ない環境に適応しながら繁殖活動を営んでいる。周期的に繰り返される繁殖活動は、この海域の魚類が熱帯特有の環境要因の周期性を感受・利用していることを示している。本海外調査は、熱帯起源の魚類が繁殖活動の同期に利用している環境要因とその内的伝達機構を明らかにすることを目的とし、1)季節変化が大きく異なるフィリッピンのサンゴ礁域に調査定点を設け、環境変動の詳細と魚類の繁殖活性の比較ならびに環境攪乱実験による繁殖関連の環境要因の特定、そして2)視床下部―脳下垂体―生殖腺系の上位に位置する脳部位にターゲットを絞った魚類の環境センサーの存在と役割の解明を行うこととした。平成26年度には学術調査を以下の日程で行った。第一回海外調査(平成26年4月27日~5月3日):Igan Marine Stationにおけるサンプルの現地での解析を行った。組織学的観察を行うために、各個体の生殖腺のサンプルを日本に持ち帰った。第二回海外調査(平成26年9月27日~10月1日):引き続き、Igan Marine Stationにおけるサンプルの現地での解析を行った。組織学的観察を行うために、各個体の生殖腺のサンプルを日本に持ち帰った。以上の結果から、調査地点でのゴマアイゴの生殖年周期の概要が判明した。すなわち、生殖腺が発達した魚は周年散見されるが、5月ころに多くの魚が一斉に産卵する可能性があった。調査地点の環境変動は、熱帯モンスーン気候と亜熱帯気候の周年変動をあわせもち、この地域に適応したゴマアイゴは両方の環境要因を利用しつつ繁殖を行っている可能性があった。
2: おおむね順調に進展している
昨年度共同研究者と打合せをして決定した調査スケジュールに合わせてサンプリングを行うことができ、本年度の第二回海外調査終了までに調査地点におけるゴマアイゴの生殖年周期と環境特性を明らかにできたため。
調査結果を精査し、生殖活性の低い時期に栄養条件を変えた実験環境で維持する。フィールド調査と実験を交えることによって、環境要因の重要性を明らかにして行く。カウンターパートとの密接な話し合いを重ねながら調査研究を行っていく予定である。
本年度企画していたフィールド調査が研究対象魚類の採集の都合によりできなかった。
複数の大学院学生を含めたフィールド調査を集中的に行うことによって、研究対象魚類の採取と調査をスムーズに行う。調査結果の解析も現地で行う体制を整える。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Marine Genomics
巻: 14 ページ: 67-70
http://dx.doi.org/10.1016/j.margen.2013.10.006
巻: 14 ページ: 59-66
http://dx.doi.org/10.1016/j.margen.2013.11.007
http://www.takemura-lab.jp