研究課題/領域番号 |
25304035
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
耕野 拓一 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (20281876)
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研究分担者 |
蒔田 浩平 酪農学園大学, 獣医学部, 准教授 (40588133)
仙北谷 康 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (50243382)
西田 武弘 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (70343986)
宮崎 さと子 (窪田さと子) 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (90571117)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ブルセラ病 / 人畜共通感染症 / スリランカ / 経済疫学 |
研究実績の概要 |
スリランカ東部のバティカロア地区の酪農家を対象に,スリランカ農務省と共同で人畜共通感染症である牛ブルセラ病に関する経済疫学調査を実施した。牛1200頭から採血し,ブルセラ病の有病率を推計し,また農家150戸について牛飼養管理などに関する質問票による調査を実施した。 牛ブルセラ病の有病率については,粗放的飼養管理を行うモスリム人の有病率が約20%と高い一方で,集約的・半集約的管理を行うタミル人・シンハラ人の有病率は数%と低く,統計的な差があった。また,有病率の高いモスリム人農家では牛の流産が,タミル人・シンハラ人農家と比較して多く,統計的な差が確認された。さらに,モスリム人では熱の頻発など,ヒトブルセラ症の感染が疑われる症状を回答する農家が統計的にも多かった。 これまでスリランカで行われた牛ブルセラ病の調査は,農家の人種の違いは考慮されてこなかった。今回の調査結果は,牛ブルセラ病の制圧には,人種の違いを考慮した普及指導などの必要性を示しており,ヒトへの感染も疑われることから,緊急の対策が必要であることを示している。貧困農家にとって,牛の流産は大きな経済的損失を意味し,ヒトブルセラ病は農業の労働生産性の低下を示唆する。すなわち,牛ブルセラ病による貧困の連鎖を断ち切ることが重要である。 以上の結果は2017年3月にスリランカにおいて,帯広畜産大学とスリランカ農務省の合同セミナーを開催し,スリランカ国の家畜生産担当者(獣医師など)などを集め,調査結果および牛の飼養管理などの説明を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スリランカ農務省と共同で,牛1200頭からの採血を行い,農家150戸からの調査を実施し,牛ブルセラ病の有病率などを明らかにした。農家の人種を考慮した牛ブルセラ病対策の必要性は,スリランカ国でも初めて指摘されたことで,スリランカ国の今後の酪農振興にも大いに貢献できると思われるからである。
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今後の研究の推進方策 |
ブルセラ病は人畜共通感染症で,今回の調査結果は牛ばかりでなく,ヒトへの感染も疑われることを示している。 今後はスリランカ東部で流通する牛乳のサンプリング調査を行い,流通する牛乳からヒトへのブルセラ病感染の実態を推計し,経済性を考慮した牛ブルセラ病対策の提言を行う。牛ブルセラ病の拡散防止のためには,他農家の家畜との接触回数を減らすことや,流産した家畜の適切な処置が重要となるが,現地農家はブルセラ病に関する知識はほとんど持たない。 農家講習会を通したブルセラ病の情報提供が,ブルセラ病の征圧にどの程度有効なのか,2017年9月に再度現地調査を行う予定である。 調査結果については,スリランカ農務省に情報提供し,科研の研究成果をスリランカの酪農振興に生かしてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
スリランカ東部における牛の口蹄疫の発生報告を受け,2017年3月に予定していた実態調査ができなくなったため,次年度に実態調査を行うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年9月から10月にかけて,スリランカ東部のバティカロアで,スリランカ農務省と共同で,牛ブルセラ病の経済疫学調査を実施する。
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