研究課題
基盤研究(B)
1.地表面観測衛星によって得られる地表面の放射温度と気象要素から算定される空気力学的地表面温度を用いて得られる地表面湿潤度指標(MTVDI; Kimura, 2007)の適用性を黄砂の発生源である中国・張掖の現場観測値で検証した。MTVDIは,黄砂発生に深く関わる地表面の土壌水分をよく再現しており,衛星マイクロ波放射計によるAMSR-Eプロダクトと比較しても良好な再現性が確認された。また,鳥取砂丘における飛砂の観測結果より,MTVDIは飛砂の臨界風速を適切に評価していることが示された。2.モンゴルのステップ草原(Bayan-Unjuul)において,枯草が飛砂を捕捉する効果を実証するための観測を行った。草類,灌木類ともに,植生の風に対する前面面積が大きくなるに伴って,飛砂を捕捉する効果が指数的に増加することが明らかになった。3.中国の黄砂発生源の1つである河西回廊(張掖)の草原荒廃地において,熱・水収支の観測,解析を行った。その結果,(1)観測期間の総蒸発散量は総降水量とほぼ一致した,(2)群落は浅い層の土壌水分を使って蒸散しており,地表面下の浅い部分に根を水平に張って,効率的に少ない雨を利用していた,(3)群落の水分効率は飽差や土壌水分に影響されていることが示唆され,乾燥条件下では蒸散を抑制し,降雨後の水分条件が良いときに蒸散を活発に行うことが理解できた。4.地表面観測衛星によって得られる昼夜地表面温度と反射率を用いた乾燥度指標(SbAI)を開発した。SbAIがある値以上になると,黄砂は発生しにくくなると仮定し,北東アジア地域におけるSbAIの閾値以上の占有率と日本で観測される黄砂発生回数(ADE)との比較を行った結果,占有率の増加とともにADEは有意に増加することが認められた。5.植生,積雪を考慮した北東アジア黄砂発生臨界風速のアルゴリズムを開発し(1日ごとに更新。さらに16日コンポジット画像も作成),web公開システムを構築した。
1: 当初の計画以上に進展している
ダスト発生源における現場観測が順調に行われたことが進展に大きく左右した。特に,2年目以降行われる予定だった衛星データのみを使って計算する乾燥度指標を開発,検証し,全球に応用できたこと,そして,黄砂発生のON,OFF判定に適用できる可能性が示されたことは大きい。また,植生,積雪を考慮した北東アジア黄砂発生臨界風速のアルゴリズムを開発し(1日ごとに更新。さらに16日コンポジット画像も作成),広くweb上で公開したことも来年度のシステム向上につながる良い成果となった。
乾燥度指標の精度を高め,北東アジア黄砂発生臨界風速のアルゴリズムのバージョンアップを図り,実況および監視システムの向上に努めたい。本システムは国際貢献という見地からも有効であり,黄砂の問題を抱えている東アジア諸国だけでなく,世界中の研究者,公共機関等に広く情報の提供およびデータの利用を供することができるネットワークシステムとなりうる。
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沙漠研究
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http://www.alrc.tottori-u.ac.jp/staff103