研究課題
基盤研究(B)
ヤク(Bos grunniens)と在来ウシ(Bos taurus)との交雑種は1代目~2代目のオスが不妊となり(雄性不妊)、戻し交配により一部3代目から妊娠可能であるが、その精子形成は明確でない。本研究は、交雑種ヤクにおいて組織学的・内分泌学的評価により精子形成の発現する年齢および交雑世代との関連性を明らかにする。また、交雑種3代目以降のオスの受胎率が低いことから、回収した精子の受精能を改善することにより次世代の作出を試みることを目的としている。本年度の成果は①組織学的考察による精子形成機能解明:これまでの成果で、精巣組織において、F1、F2とも精細管の拡張が著明で殆どが精原細胞しか認められず、精母細胞はわずかであり、未熟な状態であることが分かった。そこで本年度は、これまでに集積した世代以外のオス精巣を採取した。なお、雄等は春先に多く出荷されることから、年度末において交雑種3代目以降のオスの精巣を採取し固定保存した。次年度は、集積した精巣標本について、組織学的に精巣組織の病変を網羅・解明する予定である。②人工授精による次世代の作出:モンゴル在来ウシは季節繁殖性を示すことから、人工授精による産子作出のためには、計画的な発情誘起が必要である。本年度は、ヤク、F1、F2各5頭にオブシンクによる発情同期化を試み、同期化過程でのホルモン動態を検討するために採血した。また、同期化後に自然交配による受胎性について検討した。その結果、ヤクにおいて3頭の発情誘起が確認され、F1、0頭、F2、1頭の発情が認められた。今後、人工授精するための発情同期化法を確立するため、頭数を増やして行う計画であるとともにに、人工授精による受胎性を確認する。
2: おおむね順調に進展している
初年度は、人工授精による次世代の作出のための雌牛の発情同期化について集中的に行ってきた。また、精巣サンプルの採取についても、これまでに集積した世代以外のオス精巣を採取することができた。精巣機能評価および凍結保存液の開発についても試験継続している。
集積した精巣標本については、日本において組織学的に評価する。一方、精巣機能および発情同期化の内分泌学的評価については、現地施設で一度に測定する予定である。また、日本で開発した凍結保存液をヤク交雑種から採取した精液に応用し、凍結保存を試みる計画である。
すべて 2013
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Cryobiology
巻: 67 ページ: 184-187
10.1016/j.cryobiol.2013.06.010.