研究課題/領域番号 |
25304039
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
音井 威重 徳島大学, 生物資源産業学部(仮称)設置準備室, 教授 (30311814)
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研究分担者 |
佐藤 陽子 東亜大学, 医療学部, 教授 (50398963)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 繁殖 / 精子形成 / 交雑種 / ヤク / モンゴル |
研究実績の概要 |
ヤク(Bos grunniens)と在来ウシ(Bos taurus)との交雑種は1代目~2代目のオスが不妊となり(雄性不妊)、戻し交配により一部3代目から妊娠可能であるが、その精子形成は明確でない。本研究は、交雑種ヤクにおいて組織学的・内分泌学的評価により精子形成の発現する年齢および交雑世代との関連性を明らかにする。また、交雑種3代目以降のオスの受胎率が低いことから、回収した精子の受精・凍結能を改善することにより次世代の作出を試みることを目的としている。これまでに、採取した精巣上体精子および射出精子の凍結保存後の生存性に及ぼすOrvus ES Paste (OEP)添加効果を検討し、0.75%OEPが効果的であることを明らかにした。本年度は特に、モンゴルで採取したヤク♂とヤク♂と在来牛♀の雑種F1,F2, F3(1~4才)から精巣及び精巣上体を採取し病理学的に検討した。その結果、ヤクでは1才から2才になる段階で、細胞増殖能が有意に上昇しており、精原細胞の増殖能力は精子形成に伴っている様子が見られたが、正常な精子形成を示す2才のヤクと精子形成異常を示す2才の雑種F1,F2,F3の間には細胞増殖能に大きな違いは見られなかった。このことから、雑種における精子形成異常の原因は精細胞の細胞増殖能力には起因せず、分化過程にあることを認めた。また、主細胞を支持する基底細胞の細胞数の変化は、雑種における精巣上体全体の形態及び機能に影響を及ぼしていることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、精巣及び精巣上体を採取し組織学的考察による精子形成機能解明を行ってきた。その結果、雑種における精子形成異常の原因は精細胞の細胞増殖能力には起因せず、分化過程にあることを認めた。現在、本成果について論文に取りまとめ中である。一方、凍結・融解した精液を発情同期化した在来牛に人工授精したが、妊娠・分娩の結果が得られなかった。凍結精液を使用したヤクとのF1作出はモンゴルでは初めての成果となるため、凍結保存液の開発を含めた人工授精技術の開発について試験を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
集積した精巣標本については、本研究課題において達成した。一方、凍結保存した精液を用いた人工授精による次世代作出を継続して試みる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、相手国研究者の日程の都合から、凍結試験および人工授精に必要な十分量の精液の確保ができず、それに係る人工授精等の消耗品等の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、計画的に雄ヤクからの精液を採取し、効率的な凍結保存液の開発を含めた人工授精技術の開発について試験を継続するために、消耗品等を使用する予定である。
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