研究課題
ヤク(Bos grunniens)と在来ウシ(Bos taurus)との交雑種は1代目~2代目のオスが不妊となり(雄性不妊)、戻し交配により一部3代目から妊娠可能であるが、その精子形成は明確でない。本研究は、交雑種ヤクにおいて組織学的・内分泌学的評価により精子形成の発現する年齢および交雑世代との関連性を明らかにする。また、交雑種3代目以降のオスの受胎率が低いことから、回収した精子の受精・凍結能を改善することにより次世代の作出を試みることを目的としている。これまでに、採取した精巣上体精子および射出精子の凍結保存後の生存性に及ぼすOrvus ES Paste (OEP)添加効果を検討し、0.75%OEPが効果的であることを明らかにしたほか、モンゴルで採取したヤク♂とヤク♂と在来牛♀との雑種F1,F2, F3(1~4才)由来の精巣及び精巣上体の組織免疫学的検討結果から、雑種における精子形成異常の原因は精細胞の細胞増殖能力には起因せず、分化過程にあることを認めた。本年度は、精巣および精巣上体の機能を調べるためアンドロゲン受容体(AR)と5αリダクターゼ(SRD5A)に着目し、ヤクと雑種の違いについて免疫組織化学的な解析を行った。その結果、精巣上体の主細胞および基底細胞とも、2歳の雑種F2はヤクと比較してAR発現において差は認められなかったが、5aリダクターゼ発現が低下したことから、雄性不稔を示す雑種の精巣上体では、精子成熟に必要な男性ホルモンが不足している可能性が示唆された。さらに、雑種では、細胞死を示す精細管の割合がヤクに比べて減少しており、また、精細管一つあたりの細胞死率が低くなっていることから、雑種不稔性は、細胞死の増加によるものではない可能性が示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Arch. Anim. Breed.
巻: 59 ページ: 45-49
10.5194/aab-59-45-2016