研究課題/領域番号 |
25304040
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
苅和 宏明 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (70224714)
|
研究分担者 |
好井 健太朗 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (50421988)
有川 二郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10142704)
森松 組子 (吉松 組子) 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90220722)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 人獣共通感染症 / 診断法 / 疫学 / ウイルス / モンゴル / 国際研究者交流 |
研究概要 |
抗原性の異なる3つのハンタウイルスの核蛋白質を混合して抗原とし、Protein Gを検出試薬とするELISAを開発した。これにより様々なウイルスに対する抗体検出が可能となった。抗体検出をさらに簡便にするために、核蛋白質の混合抗原を用いたイムノクロマト法を開発した。 ダニ媒介性脳炎ウイルスのMおよびE蛋白質はエンベロープ上の糖蛋白質で、宿主に認識される主要な抗原となっている。ダニ媒介性脳炎ウイルスのMとE蛋白質を免疫グロブリンIgGとの融合蛋白質(TBEV-ME-IgG)として哺乳類細胞中で発現させたところ、細胞上清中に多量のTBEV-ME-IgGが分泌されることが判明した。本TBEV-ME-IgGを抗原とした抗体検出用のELISAの確立を行った。 抗原性の異なる3つのハンタウイルスの核蛋白質を混合して抗原とするELISAと、複数の核蛋白質を用いたイムノクロマト法を開発した。これらの抗体検出法を野生げっ歯類に応用し、抗体検出が可能であることを実証した。また、ダニ媒介性脳炎ウイルスのMとE蛋白質を免疫グロブリンIgGとの融合蛋白質(TBEV-ME-IgG)として哺乳類細胞中で発現させ、野生げっ歯類等への応用のために、細胞上清中から多量のTBEV-ME-IgGを回収して精製した。 モンゴル農業大学獣医学研究所の研究者を北海道大学大学院獣医学研究科に招聘し、ダニ媒介性脳炎ウイルスの診断法の習得に協力した。さらに、北海道大学とモンゴル農業大学の共同でモンゴル国内での野生げっ歯類やダニの調査を行うことに合意し、覚書を締結した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、近年国内外で問題となっているウイルス性人獣共通感染症のうち、侵入または流行の危険性があり、重篤化しやすく致死率も高いハンタウイルス感染症、ダニ媒介性脳炎などの感染症について簡便な診断法を開発することを第一の目的としている。平成25年度はハンタウイルス感染症とダニ媒介性脳炎の抗体検出法を開発することに成功し、これらの診断法を流行地の野生動物に応用することも可能な段階にある。また、本研究のもう一つの目的は、人獣共通感染症の流行地域において疫学調査を実施して、これらの感染症の流行状況に関する情報を得ることである。すでに平成25年度に、モンゴルの共同研究者を北海道大学に招聘してダニ媒介性脳炎の診断法の習得に協力したばかりでなく、平成26年度にはモンゴルにおいて現地の研究者とともに共同疫学調査を実施することが予定されている。 本研究の進展により、まずモンゴル国内におけるウイルス性人獣共通感染症の流行状況に関する貴重な情報が得られることが強く期待される。この情報は国外の流行国からわが国への人獣共通感染症の進入に対して有効な対策を立案する上で大変有用な知見となる。
|
今後の研究の推進方策 |
モンゴル農業大学獣医学研究所と共同でモンゴル国内での野生げっ歯類やダニの調査を実施する予定である。本調査において、モンゴルにおけるハンタウイルスやダニ媒介性脳炎ウイルスの分布域や病原巣動物、媒介節足動物が明らかになる。また、流行中のウイルスの性状についても解析を行う。 ハンタウイルス感染症、ダニ媒介性脳炎、およびウエストナイル熱の流行国であるロシアにおいて疫学調査を実施し、様々な野生鳥獣に由来するこれらの感染症の病原体が自然界でどのように存続しているのか、詳細に解析する。また、患者からの検体を採取し、抗体検出や血清学的な感染ウイルス型の鑑別を行う。疫学調査で得られた検体のうち、ウイルスの存在が疑われるものについては、ウイルス分離を行い、遺伝子解析や実験動物への感染実験を行って、分離ウイルスの様々な性状を解析する。 本研究で明らかにされた各地域におけるハンタウイルス感染症、ダニ媒介性脳炎、およびウエストナイル熱の流行様式の特徴を日本の現状と比較することにより、わが国へのこれらの感染症の侵入や流行の阻止のための具体的手段が明らかになる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は予定していた海外出張が、共同研究者の都合で中止となった。したがって旅費の支出が予想を下回った。また、海外出張の際に疫学調査で得られるはずであった検体がなかったため、それらの検体の検査に用いる試薬類の消耗品費が予想以下の支出となった。 平成26年度は、モンゴルで疫学調査を実施することが予定されており、多くの検体が得られることが期待される。したがって、より多くの旅費、ならびに消耗品費の支出が予想される。
|