研究課題/領域番号 |
25304040
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
苅和 宏明 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (70224714)
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研究分担者 |
有川 二郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10142704)
好井 健太朗 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (50421988)
森松 組子 (吉松組子) 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90220722)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人獣共通感染症 / 診断法 / 疫学 / ウイルス / モンゴル / 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
ハンタウイルスの一種であるHokkaidoウイルス(HOKV)の核タンパク質(NP)をE. coliにて発現させた組換えNP(HOKV rNP)を抗原としたイムノクロマトグラフィー(ICG)ユニットを作製した。腎症候性出血熱の病原体であるPuumalaウイルス(PUUV)はヨーロッパヤチネズミを宿主とし、NPの抗原性がHOKVに近いことが知られている。2012年にロシアのサマラ地方で捕獲したヨーロッパヤチネズミの血清298検体についてICGと蛍光抗体法(IFA)により抗ハンタウイルス抗体の検出を実施し、ICGのIFAに対する感度および特異度を求めたところ、それぞれが97.8%(44/45)と96.0%(243/253)となった。本ICGはげっ歯類の抗ハンタウイルス抗体の検出法として信頼性が高いことが明らかになった。 ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)のprM蛋白質とE蛋白質とを哺乳類細胞で発現させることで、本来のウイルス粒子と同様の抗原性を持ち、かつ安全性の高いウイルス様粒子(SPs)を作製できることが報告されている。本年度の研究では、さらにStrep-tagを付加したE蛋白質とprMを哺乳動物細胞で発現させて、SPsを回収した。Strep-tag付加SPsをStrep-Tactinによりプレートに効率的に捕捉するELISAの系を構築し、TBEVの流行巣で捕獲された野鼠血清を用いて抗体検出を行って、中和試験に対する特異度と敏感度を算出したところ、それぞれ97.7%と96.8%であった。今回開発したELISAは動物種非特異的な抗TBEV抗体検出法として優れていることが判明した。 平成27年8月、モンゴルのセレンゲ州に赴き、げっ歯類23匹を捕獲した。これらのげっ歯類についてハンタウイルスとTBEVに対する抗体の検出を上記の診断法で行ったが、いずれも陰性であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、近年国内外で問題となっているウイルス性人獣共通感染症のうち、侵入または流行の危険性があり、重篤化しやすく致死率も高いハンタウイルス感染症、ダニ媒介性脳炎などの感染症について簡便な診断法を開発することを第一の目的としている。平成27年度はハンタウイルス感染症とダニ媒介性脳炎の新規抗体検出法を開発することに成功し、これらの診断法を流行地の野生動物の抗体検出に応用して、新規に開発された診断法の有用性が高いことを実証した。また、本研究のもう一つの目的は、人獣共通感染症の流行地域において疫学調査を実施して、これらの感染症の流行状況に関する情報を得ることである。すでに平成25年度に、モンゴルの共同研究者を北海道大学に招聘して、ダニ媒介性脳炎の診断法の技術習得に協力した。平成27年度には、モンゴルにおいて現地の研究者とともに共同疫学調査を実施し、げっ歯類の捕獲を行った。 本研究のさらなる進展により、モンゴル国内におけるウイルス性人獣共通感染症の流行状況に関する貴重な情報が得られることが強く期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においても、モンゴル農業大学獣医学研究所と共同でモンゴル国内での野生げっ歯類の調査を行う予定である。平成28年度はダニの調査も実施して、モンゴルにおけるTBEVの流行状況についてさらに詳しく調べる予定である。本調査において、モンゴルにおけるハンタウイルスやTBEVの分布域、病原巣動物、媒介節足動物などが明らかになる。また、流行中のウイルスの性状についても解析を行う。 ハンタウイルス感染症、ダニ媒介性脳炎、およびウエストナイル熱の流行国であるロシアにおいて疫学調査を実施し、様々な野生鳥獣に由来するこれらの感染症の病原体が自然界でどのように存続しているのか、詳細に解析する。疫学調査で得られた検体のうち、ウイルスの存在が疑われるものについては、ウイルス分離を行い、遺伝子解析や実験動物への感染実験を行って、分離ウイルスの様々な性状を解析する。 本研究で明らかにされた各地域におけるハンタウイルス感染症、ダニ媒介性脳炎、およびウエストナイル熱の流行様式の特徴を日本の現状と比較することにより、わが国へのこれらの感染症の侵入や流行の阻止のための具体的手段が明らかになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、海外疫学調査で得られる検体数が予想を下回ったため、検査に要する試薬類などの消耗品の支出が予想以下となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、平成27年度よりも多くの検体が得られると予想される。したがって、より多くの消耗品費の支出が予想される。
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