研究課題/領域番号 |
25304045
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
早坂 大輔 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (10346926)
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研究分担者 |
角田 隆 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (30457527)
鍋島 武 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (30546859)
黒崎 陽平 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (40415443)
堀田 こずえ 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (70466192)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マダニ / ウイルス / リケッチア / ベトナム / カンボジア |
研究実績の概要 |
本研究では、インドシナ地域に分布するマダニ媒介性ウイルスおよびその他のマダニ媒介性病原体の分布調査を行うことを目的とし、ベトナム、カンボジアおよび国内においてマダニを採集し、病原体検出を試みた。また、分離された病原体について生物学的性状解析を行った。 本年度は、ベトナム南部のカッティエン、カンボジア、国内では長崎県五島列島でマダニ採集を行い、ウイルス分離を試みた。また、ベトナムのハノイ近郊で捕獲されたドブネズミからリケッチアの検出を試みた。その結果、1)カッティエンで採集したカクマダニからウイルス分離を試みたが、検出されなかった。2)カンボジアにおいて数十匹のマダニを採集した(マダニ種の確認およびウイルス分離は来年度実施予定)。3)五島で採集されたタカサゴチマダニから新規のナイロウイルスが分離された。このウイルスは、ブニヤウイルス科ナイロウイルス属のうち、クリミアコンゴ出血熱グループに属することが示唆された。A129(IFNAR KO)マウスへの感染実験では致死性を示し、哺乳類由来培養細胞で感染・増殖性が確認された。4)新規ウイルスについて、リアルタイムRT-PCR法による遺伝子検出法を確立した。また、このウイルスのNタンパク質を大腸菌で発現させた抗原を用いたELISA法を確立した。5)ハノイ近郊のドブネズミからツツガムシリケッチア遺伝子が検出され、遺伝子系統解析からGilliam型に近い株であることが示された。 今回、新規のナイロウイルスが分離された、ヒトでの感染例は不明である。この新規ウイルスについて、遺伝子検出法および抗体検出法を確立したので、今後ヒトおよび動物を用いた血清学的調査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベトナム、カンボジアでのマダニ採集を実施しウイルス分離を試みている点、ベトナムのハノイ近郊で捕獲された小動物からリケッチアを検出している点、マダニから新規ウイルスを分離し性状解析を行っている点、また、これらの成果に基づいて論文発表を行い、または論文投稿準備中である点からおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ベトナム、カンボジアに加えラオスにおいてもマダニを採集し、ウイルスおよびその他病原体の検出を試みる計画である。また、新規ナイロウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルスおよびSFTSウイルスについて、ベトナムで捕獲された小動物などで血清疫学調査を行う予定である。また、国内のヒトおよび動物血清をもちいて同様にこれらのウイルスの血清疫学調査を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ベトナム、カンボジアでのマダニ採集において、相手国方の事情もあり予定より採集地の数が少なく実施したため。また、分離した病原体の遺伝子解析および病原性解析において、試薬量および動物個体数を見込みより減らして行うことができたため。また、研究成果の論文発表において、当初の予定から別の雑誌にかえたために掲載料が減額されたため。また、現在投稿中の論文(オープンジャーナル)について年度内に掲載可否の決定がおりず次年度に持ち越しとなっているため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、マダニ採集地を増やして行う予定である。現在、さらに新たな病原体をマダニから分離しているが、この病原体の生物学的性状解析については次年度において解析を進める。また、現在投稿中および投稿予定の論文について、比較的掲載料が高いオープンジャーナルへの投稿を検討する。
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