研究課題
基盤研究(B)
アジアの在来馬は、近年のアジア諸国の経済的発展に伴いその飼育頭数が急激に減少し、遺伝的多様性が失われることが危惧されているが、その保全には十分に取り組まれていない。したがって、アジア在来馬の動物遺伝子資源としての保全のために、その遺伝学的特性を明らかとすることは緊急の課題である。そこで本研究は、アジア在来馬の特徴を強く残していることが期待されるインドシナ半島北部山岳地域を対象として、在来馬の調査、DNAサンプルの収集を行い、その遺伝的特性、多様性、類縁関係を明らかとすることを目的として行われた。平成25年度はミャンマー国立獣医科学大学をカウンターパートとして実験室等の施設の提供を受け、採取した血液からのDNAの抽出とPCR-RFLP等の初歩的な遺伝子の解析を行える実験室を立ち上げた。次に、ここを拠点として、日本側の研究代表者、連携研究者等の計6名とともに、ミャンマー獣医科学大学の教員等からなる調査チームを編成し、3回にわたってミャンマーの東部山岳地域のシャン州およびカチン州において在来馬の血液のサンプリングを実施し、体高測定、毛色等の外貌の観察、記録を行った。また、在来馬の利用実態、飼育形態等についての現地での聞き取り調査を実施した。次に、これらのDNAを用いて毛色に関わることが知られているTYRP1、ASIP、MC1R、KIT、STX17遺伝子などについてPCR-RFLPを用いて、その遺伝子型を調べた。その結果、ミャンマー在来馬にも海外の品種と同様の毛色に関する遺伝子の変異が存在することが明らかとなった。さらに、精製されたDNAサンプルを、国立獣医科学大学の同意の下で日本に持ち帰り、ミトコンドリアDNAのD-loop領域の塩基配列の解析を現在実施中である。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、日本側の研究代表者、連携研究者等の計6名とともに、ミャンマー獣医科学大学の教員等からなる調査チームを編成し、3回にわたってミャンマーの東部山岳地域のシャン州およびカチン州において在来馬の血液のサンプリングを実施し、シャン州、カチン州についてそれぞれ10地域前後から、合計約180個体の血液サンプルと、個体の情報を収集し、さらにDNAを抽出して、毛色遺伝子を中心とするいくつかの遺伝子についての遺伝子型を調べた。またミトコンドリアDNAの塩基配列も解析中である。
平成26年度はラオスの調査を中心に行う予定であり、すでに7月中旬に1回目の予備調査を行うことで、ビエンチャンの国立農林業研究所と同意を得ており、北部のルアンパバーン県を中心に馬の飼育状態を調査し、12月から1月にかけて、サンプリングのための本調査を実施する予定である。また、サンプリングしたDNAサンプルについて、ミトコンドリアDNAの解析、一塩基多型、マイクロサテライトマーカーのタイピングを継続する。平成27年度も当初計画通り、ベトナムを中心に調査を行い、得られたDNAサンプルの解析を行う予定である。
当初平成26年3月に予定してたラオス在来馬に関する予備調査が、カウンターパートのラオス国立農林業研究所の都合により、平成26年7月に実施することになった。したがって、この予備調査は平成25年度の実施から、平成26年度の実施となり、25年度の予算から出費はなくなった。平成26年7月にラオス国立農林業研究所の職員とともにラオス北部の山岳地帯を中心に在来馬の飼育状態やサンプルリングの可能性について、予備調査を行う予定であり、これらの経費に使用する計画である。
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Anim. Sci. J.
巻: 84 ページ: 585-591.
10.1111/asj.12045.