研究課題
アジアの在来馬は、近年のアジア諸国の経済的発展に伴いその飼育頭数が急激に減少し、遺伝的多様性が失われることが危惧されているが、その保全には十分に取り組まれていない。したがって、アジア在来馬の動物遺伝子資源としての保全のために、その遺伝学的特性を明らかとすることは緊急の課題である。そこで本研究は、アジア在来馬の特徴を強く残していることが期待されるインドシナ半島北部山岳地域を対象として、在来馬の調査、DNAサンプルの収集を行い、その遺伝的特性、多様性、類縁関係を明らかとすることを目的として行われた。平成26年度はラオス国立農林研究所をカウンターパートとして実験室等の施設の提供を受け、採取した血液からのDNAの抽出を行える実験室を立ち上げた。次に、ここを拠点として、日本側の研究代表者、連携研究者等の計4名とともに、ラオス国立の農林研究所の研究員等からなる調査チームを編成し、ラオスの北部山岳地域のルアンパバーン県、ウドムサイ県および東部のベトナム国境にあるシエンクアーン県において在来馬の血液のサンプリングを実施し、体高測定、毛色等の外貌の観察、記録を行った。また、在来馬の利用実態、飼育形態等についての現地での聞き取り調査を実施した。次に、前年度の海外調査によって得られているミャンマー在来馬のDNAを用いてミトコンドリアDNAのD-loop領域の塩基配列の解析、Y染色体のハプロタイプの解析を行った結果、ミャンマー在来馬野遺伝的多様性は高いこと、都市部を中心に西欧系品種の影響を受けている可能性があるが、山間部の馬はその影響を受けておらず、アジア在来の小型馬としての特徴を強く残している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、ラオスのルアンパバーン県、ウドムサイ県、シエンクアーン県についてそれぞれ数地域から、合計約120個体の血液サンプルと、個体の情報を収集し、さらにDNAを抽出して、昨年度に得られているミャンマーのサンプルを含めて遺伝学的解析を行った。
平成27年度はベトナムの調査を中心に行う予定であり、すでに7月中旬に1回目の予備調査を行うことで、フエ農林大学と同意を得ており、北部の中国、ラオスとの国境付近を中心に馬の飼育状態を調査し、12月から1月にかけて、サンプリングのための本調査を実施する予定である。また、中国雲南省の在来馬調査のための予備調査も行う。さらにサンプリングしたDNAサンプルについて、ミトコンドリアDNAの解析、SNP、マイクロサテライトマーカーのタイピングを継続する。
中国雲南省における在来馬調査のための予備調査が、中国のカウンターパートとの間で日程調整が順調に行かずそのための経費に残額が生じた。
今後、中国雲南省の予備調査を行うために使用する予定である。
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Anim. Sci. J.
巻: 86 ページ: 未定
動物遺伝育種研究
巻: 42 ページ: 11 19