研究課題
アジアの在来馬は、近年のアジア諸国の経済的発展に伴いその飼育頭数が急激に減少し、遺伝的多様性が失われることが危惧されているが、その保全には十分に取り組まれていない。したがって、アジア在来馬の動物遺伝子資源としての保全のために、その遺伝学的特性を明らかとすることは緊急の課題である。そこで本研究は、アジア在来馬の特徴を強く残していることが期待されるインドシナ半島北部山岳地域を対象として、在来馬の調査、DNAサンプルの収集を行い、その遺伝的特性、多様性、類縁関係を明らかとすることを目的として行われた。平成27年度はベトナムのフエ農林大学をカウンターパートとして、7月と12~1月の2回に分けて予備調査を行った。予備調査では、フエ農林大学の実験室等の施設において、いくつかの実験器具を持ち込めば、採取した血液からのDNAの抽出を行える実験室を立ち上げることが可能であることが確認された。次に、ここを拠点として、日本側の研究代表者とフエ農林大学教員よりなる調査チームにより、一回目の予備調査ではベトナムの北部山岳地域のラオカイ省、ハジャン省において、2回目の予備調査では、東北部のロンサン省、バカン省および北西部のディエンビエン省において、在来馬の体高測定、毛色等の外貌の観察、記録を行った。また、在来馬の利用実態、飼育形態等についての現地での聞き取り調査を実施した。以上の2回にわたる予備調査により、本調査においてはこれらの地域で在来馬の血液のサンプリングを行い、フエ農林大学においてこれらの血液サンプルからDNAを抽出することが可能であることが確認された。さらに、2回目の予備調査ではベトナム政府天然資源環境省の担当官と面談し、名古屋議定書に基づく生物資源の国外持ち出しの手続きについての打ち合わせを行った。
3: やや遅れている
当初の研究計画では、27年度中にベトナムの本調査を行い、血液サンプルを採取し、DNA抽出を行い、日本に持ち帰る予定であったが、ベトナム政府は2015年に生物遺伝資源の保護のための国際的な協定であるいわゆる名古屋議定書を批准したため、DNA等の生物資源の国外持ち出しに厳しい制限をかける様になったため、管轄官庁である天然資源環境省からの在来馬DNAサンプルの日本への持ち出しの許可を得るの時間を要している。
研究期間を延長し、平成28年度にベトナム北部ラオカイ省、ハジャン省、ロンサン省、バカン省、ディエンビエン省の山岳地帯の少数民族の農村を中心に、在来馬の血液のサンプリングを実施し、フエ農林大学の実験室にて、これらの血液サンプルよりDNAを抽出する。これらのDNAサンプルは名古屋議定書に関連したベトナム国内法に準拠した手続きをへて、日本に持ち帰り、ミトコンドリアDNAの解析、SNP、マイクロサテライトマーカーのタイピングを行う。
本研究では、ミャンマー、ラオス、ベトナム等において在来馬の調査を実施する事を予定していた。そのうち、ミャンマー、ラオスの調査はすでに終了し、ベトナムもすでに予備調査を実施している。しかしベトナム政府が2015年に生物資源の保護に関する名古屋議定書を批准したため、サンプルの持ち出しについての許可をえる手続きがきわめて煩雑になった結果、本調査は本年6月に実施することとなったため。その経費を繰り越すこととした。
本年6月に予定されている岡山大学とフエ農林大学との共同による、ベトナム北部における在来馬の血液のサンプリングとDNAの抽出およびそれらのサンプルの解析に使用する。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Anim. Sci. J.
巻: 87 ページ: 469 476
日本畜産学会報
巻: 87 ページ: 1 10