研究課題/領域番号 |
25304047
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小林 淳 山口大学, 農学部, 教授 (70242930)
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研究分担者 |
門野 敬子 国立研究開発法人農業生物資源研究所, 昆虫科学研究領域, ユニット長 (40355722)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核多角体病ウイルス / 野蚕 / ウイルスゲノム / 昆虫病理 / 昆虫機能利用 |
研究実績の概要 |
1.野蚕NPVのサンプリングとゲノムDNA解析(1)現地調査とサンプリング:インドのクリキュラおよびタイのエリサンのNPVの発生状況の現地調査を行ったが,病気の発生は確認できなかった.一方,日本(長野)のテンサンNPV発生現場においてNPVに感染したシンジュサンをサンプリングできた.(2)ゲノムDNA解析:前年度に入手したカンボジアのエリサンおよびインドのタサールサンのウイルスDNAを次世代シーケンサーにより解読し,全ゲノム配列の再構築を実施した.その過程で,同一塩基が連続する部分や繰り返し配列においてエラーが見出されたため,これまでに解読したすべてのNPVのゲノム配列の見直し作業に着手した. 2.野蚕NPV検出用 PCR技術の開発(1)プライマーの設計とPCR条件の最適化:各種野蚕NPV分離株間で比較的大きな挿入欠失変異が見られるゲノム上の3領域を標的としたPCRプライマーを設計し,分離株を識別可能なマルチプレックスPCR法を確立した.(2)実証性検証:各種野蚕NPV分離株をエリサンに経口感染させ,継時的に体液を回収して上記のマルチプレックスPCRを実施した結果,病徴が現れる数日前には明瞭な分離株特有のバンドパターンを検出できたことから,実用性が確認された. 3.野蚕NPVのタンパク質生産特性(1)昆虫培養細胞における感染・増殖性検定:エリサンおよびテンサンの培養細胞の樹立に至っていないため,タンパク質生産特性のサクサン由来AnPe細胞との比較は実施できなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インドネシアおよびタイにおいて野蚕NPVを入手できなかったが,そもそもこの地域において野蚕NPVの発生が報告されていないため,ある程度想定内の結果といえる.むしろ,国内でテンサン以外の野蚕としては,はじめてシンジュサンからNPVを分離できたことは想定外の貴重な成果であり,国内での野蚕NPVの分化について興味深い知見をもたらすことが期待される.また,次世代シーケンサーにより解読された配列データに含まれた使用機器特有のエラーを検出し,その修正が可能になったことにより,今後のゲノム解析の精度を上げるための有効な技術的進歩を達成できた.さらに, NPV分離株を識別可能なマルチプレックスPCR法を確立し,その実用性を計画通り達成できた.新たな野蚕培養細胞の樹立には至っていないが,通常培養細胞の樹立は数年の試行錯誤を経て達成されることから,想定内の状況といえる.
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今後の研究の推進方策 |
1.野蚕NPVのサンプリングとゲノムDNA解析(1)現地調査とサンプリング:27年度までに予定通り入手できなかったタサールサンやクリキュラなどのNPVについて,現地の研究者との情報交換を継続し,サンプリングを依頼するとともに,日本の野サンNPV発生現場において発病していない個体や野外昆虫からのDNAサンプリングを行う.(2)ゲノムDNA解析:前年度から着手した各種野蚕NPVの次世代シーケンサーによる比較ゲノム配列解析を完了し,野蚕NPVの系統進化に関するモデルを提案する. 2.野蚕NPV検出用 PCR技術の開発(2)実証性検証:NPV発生現場でサンプリングした発病していない個体や野外昆虫のウイルス保有の有無を明らかにし,感染経路を考察するとともに,ウイルス病予防あるいは被害軽減のための有効な対策の公安を試みる. 3.野蚕NPVのタンパク質生産特性(2)野蚕生体における多角体生産効率検定:シンジュサン・エリサン雑種休眠系統を作出し,各野蚕NPVの多角体生産効率を比較し,タンパク質生産における長所・短所を,サクサンNPVを基準に考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の都合により,H27年度に予定していたインドおよび東南アジアへの海外調査が実施できなかったため,旅費として確保していた経費が未使用のまま残り,次年度使用額となった.
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次年度使用額の使用計画 |
研究分担者が,H27年度に実施できなかった海外調査をH28年度に実施するための旅費として主に使用する予定である.
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