研究課題/領域番号 |
25305001
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 公益財団法人放射線影響研究所 |
研究代表者 |
片山 博昭 公益財団法人放射線影響研究所, 情報技術部, 部長 (20360852)
|
研究分担者 |
星 正治 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 名誉教授 (50099090)
山本 政儀 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (10121295)
坂口 綾 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00526254)
野宗 義博 島根大学, 医学部, 教授 (50164695)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | セミパラチンスク / 健康影響 / 低線量 / リスク評価 / 甲状腺 |
研究概要 |
1.本研究課題の中心都市はセミパラチンスク市で、旧ソ連セミパラチンスク核実験場から最短で約110km離れた場所にある。旧ソ連はセミパラチンスク核実験場で核実験を400回以上にわたって行い、その直後放射能を含んだ雲がセミパラチンスク市を含む近くの村々を通過した。それらの村は、ドロン、サルジャル、カイナール、カラウル、ズナメンカ各村などがある。主たるカウンターパートはカザフ放射線医学環境研究所である。2.現地研究所では引き続き、地域住民の基礎調査を行い、疫学解析のためのデータベースの充実を図っている。3.これまでに現地にて甲状腺検査を行った結果を精査し、どの項目を疫学解析に使用できるかをドイツ・ミュンヘンの研究協力者と協議した。その結果を受けて、検査結果入力のためのプログラムを開発した。4.セミパラチンスク核実験場近郊の研究ではカイナール村を中心とし、土壌をサンプリングした。それらの土壌は日本に持ち帰り本研究分担者がそのセシウムやプルトニウムの測定を行った。これまでの測定データを検討し正確な被曝線量推定のための基礎資料とした。5.ロシアのブルナシアン医学生物物理学センターの研究協力者は、セミパラチンスクの線量評価方式を確立し、セミパラチンスクの被曝者のデータベースに入力する準備をした。6.WHOの付属機関である国際がん研究機関(IARC)がセミパラチンスク旧核実験場周辺住民に対する低線量被曝による影響を調査するプロジェクトを開始した。このプロジェクトには各国から放射線に関する研究所が参加しており、日本からは放射線医学総合研究所が参加している。本研究代表者である片山は外部諮問委員として参加要請があり、第1回のプロジェクト会議において、本研究に関する発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性的な低線量被曝が人体に対してどのような影響を与えるかを、本研究協力者等が過去10年間旧ソビエト核実験場周辺住民を対象に行ってきた甲状腺検査を元にリスクの程度を疫学的に解析することを本研究では目的にしている。そのため、① 過去行われてきた甲状腺検査においてどのような検査結果がリスク計算に重要であるか、② 検査を受けた対象者の居住歴、職業、人種など被曝線量(外部被曝および内部被曝)計算に必要な情報が得られるか、③ 被曝線量計算による推定値と、被爆試料などから得られた物理的線量との乖離はどの程度か、またその正確度は、⑤ 統計的なパワーがあるリスク推定値が得られるかどうか、など考慮しそのステップ毎に検証を行わなければならない。 今年度の本研究における活動で、①についてドイツ連邦放射線防護機関に属する研究協力者と検討し、データベースに入力するための項目を決定し、データベース入力プログラムを作成した。②について、カザフ放射線医学環境研究所の研究所長等と会議を持ち、研究所内に設置されている近郊住民の疫学解析用データベースに住民の居住歴を始めとして、線量計算に必要な情報が入力されていることを確認した。③について、ドロン村での検証は既に済んでおり、他の村において採取された試料の物理線量測定を始めた。 以上の状況により概ね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
1.初年度に引き続き、甲状腺の検診結果の調査・検証を進め、被曝線量調査を継続し、基本情報および死亡情報の入力を継続する。疫学調査に必要な対象者の血液検査、生化学検査、更には甲状腺機能検査等の結果についても入力を継続する。これらの検査データにカザフ放射線医学環境研究所が独自に行っている被曝対象者の詳細な検査データを加え、臨床情報データベースに入力する。個人被曝線量推定のための準備:被曝時状況の入力。居住歴の確認作業。死亡情報入力が終了後、疾患別、年度別、地域別死亡数の表を作成し、各地域による格差があるか検討する。 2.線量推定に用いる調査データを線量データベースに入力し、線量の推定計算を行い、住民の健康と罹患および死亡と線量との関係を解析する。線量推定は、個人ごとに外部被曝線量および内部被曝線量の推定を行うが、その際、居住場所と食習慣とが各々重要なファクターとなるため、ダブル入力等によって入力ミスを防ぎ、正確な線量を求める。過去4度行われた線量を推定する方式についての国際会議を通じ、統一された線量推定方式の確立を行い、本研究の研究代表者が構築しカザフ放射線医学環境研究所に設置した基本情報データベースの個人情報を元に、各個人の被曝線量の推定計算を行う。線量計算は、ロシアのブルナシアン医学生物物理学センターの研究協力者等が行う。 3.被曝線量調査においては、これまでドロン村を中心に行ってきたが、それ以外の村でも試料の収集、被曝線量の物理的測定を行っており、今年度はそれらの試料から測定されたセシウム137の測定結果を線量データベースに入力する。 4.その他:カザフ放射線医学環境研究所の研究所長は、各被爆者の健康調査と共に、各種検査結果を確認し、臨床情報データベースに入力する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
ロシア側の協力者であるブルナシアン医学生物物理学センターの研究協力者が発表予定であった広島国際シンポジウムが主催者の都合により2014年度に延期になったため。 広島国際シンポジウムは2014年度秋に開催予定であり、このシンポジウムにロシア側協力者であるブルナシアン医学生物物理学センターの研究協力者を発表者として招聘しその招聘にかかる旅費等に使用する。
|