研究課題/領域番号 |
25305003
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山内 太郎 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (70345049)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 狩猟採集社会 / 子ども / 人類進化 / 栄養摂取 / 身体活動 |
研究実績の概要 |
H26年は2年目にあたり、昨年度(H25)の予備調査に引き続き本調査を行った。 パプアニューギニアは政治情勢が悪いことや現地カウンターパートとこちらの渡航日程が合わなかったことなどから昨年度の調査データの集計と精査を行い、カメルーンのフィールド調査に注力した。 カメルーンのフィールド調査では、数家族からなる小集団の森キャンプに同行し、子どもの狩猟活動について定量的なデータを得た。従来は子どもの狩猟=遊びとみなされていたが、従来考えられていた以上に長時間、真剣に狩猟を行っていることが明らかとなった。しかし、エネルギーやたんぱく質といった栄養価に換算すると、子どもの狩猟効率(時間当たりの栄養獲得量)は成人には及ばなかった。 また、乳児を対象とし、集約的な育児観察を行った。予想通り、母親が圧倒的に長時間育児活動を行っていたが、意外なことに母親以外の成人女性や祖母よりも、子ども(姉や兄、その他の子ども)が長時間育児を担っていることが明らかとなった。 昨年度の文献調査でわかったアジア地域の新興国の子どもの肥満化傾向と体力低下について、中国とインドネシアを視察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H26年度はパプアニューギニアでのフィールド調査は行わず、H25年度の調査データのまとめを行った。一方、カメルーンにおいては、昨年度に引き続きフィールド調査を行った。毎年2か国(2集団)で調査を行うことが理想的であるが、様々な事情から調査が1か国となることは想定内であり、その分カメルーンで集約的な調査を実施することができた。 カメルーンでの調査は、想定以上の2テーマ(森キャンプにおける子どもの狩猟活動についての詳細な定量データ、および、乳児の育児協働の観察)を実施することができた。 経済のグローバル化の波から遠い狩猟採集社会と対照的である、急速な経済発展の渦中にある新興国について視察を行う事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、H26年度と同様、H27年度には身体計測、食と遊びの調査、体力テストの調査を行う。パプアニューギニアの対象地域においては政治情勢の不安が継続していることに加えて地震等自然災害に見舞われているが、調査対象や方法をより簡便・簡素化することも含めて、現地の事情を鑑みて柔軟な方法で調査を継続する。 カメルーンではH26年度に引き続きフィールド調査を継続する。また、狩猟採集社会と対照的な経済発展の渦中にある新興国(中国やインドネシアなど)における子どもの調査の実施可能性を探り、調査を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定内であったが、予定していたパプアニューギニアでの調査が現地の状況(政情不安定、カウンターパートの予定など)のため実施しなかった。そのため、身体計測、食事・栄養調査、身体活動調査、体力測定などフィールド調査に関する測定機器の新規購入を見送り、既存のもので済ませた。 H26年度は2年目であり、成果発表(とくに国際学会)が少なかったため、旅費の支出が少なかった。同様に、成果(とくに論文、著書)がまだ少なく、英文校閲費や翻訳費などの費用が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度は現地の状況を考慮して、柔軟な方法でパプアニューギニアの現地調査を行う。また、カメルーンにおいてはH26年度と同様に、乳幼児、子ども(学童期~思春期)について現地調査を行う。 上記海外調査に加えて、国内旅費(連携研究者との研究会、調査方法・測定方法の練習会、学会発表)、国際学会における成果発表を行う。また、調査で用いる各種測定機器(身体計測、食事・栄養調査、身体活動量調査、体力測定などに関する機器)を購入する。
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