研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、東南アジア地域のみで特異的に分布するゲノタイプ6に属すHCV(HCV/6)の起源、生態、遺伝的多様性、感染拡大様式、病態・治療抵抗性、病原性を解明することである。また併せて、東南アジア地域で今問題となっている緊急性の高い感染症の実態を調査することを目的とする。この目的達成のため、今年度はその実態が不明であるカンボジアにおけるHCVの疫学調査を分子疫学的に実施した。調査したのは、カンボジアの首都プノンペン市内およびその近辺に在住するカンボジア人172例(供血者および肝疾患患者)である。HCVのNS5B領域をPCRで増幅した後、塩基配列を決定し、HCVシークエンスのデータベースサイトでゲノタイプを決定した。その結果は、1a/2.3%、1b/39.5%、2a/2.9%、6a/2.9%、6c/1.7%、6e/30.8%、6f/12.8%であった。カンボジアにおいても隣国のベトナムと同様に、ゲノタイプ6に属すHCV変異株が広く流行している実態を初めて明らかにした。今後は同国に流行するHCV/6の全長遺伝子決定後、周辺国に流行するHCV/6との遺伝的関連を詳しく比較解析し、その起源を探る。カンボジアにおける肝疾患、特に肝癌発生とHCVの関連を現在検討中である。このHCVに関する研究に加えて、今東南アジアで流行し、エマージング疾患として重要である感染症も併せて調査した。昨年ベトナムでは風疹が大流行したため、その分子疫学的特徴を解析した。その結果は、ゲノタイプ2Bの風疹ウイルスが流行していることを明らかにした。また、先天性風疹症候群を示す胎児・新生児20例全例からウイルスが分離できた。ベトナムにおける風疹の制圧は、緊急の課題である。
2: おおむね順調に進展している
現地の多くの関係者の方々の協力が得られたために、ほぼ順調に研究を進めることができた。
ベトナムとカンボジア地域におけるHCVの分子疫学的特徴について、さらに症例数を増やして詳細に検討したい。また臨床所見、特に肝癌との関連について、病理学的に解析を加えたい。
3月~4月にかけての海外旅費分が、次年度決済となったのが理由です。次年度分の海外での調査研究のための旅費として使用する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Journal of General Virology
巻: 94 ページ: 76-80
10.1099/vir.0.047506-0
Virus Research
巻: 171 ページ: 65-70
10.1016/j.virusres.2012.10.027
Journal of Clinical Virology
巻: 57 ページ: 152-156
10.1016/j.jcv.2013.02.008