研究実績の概要 |
今年度の成果: 1. ベトナム由来HCVの全長ゲノム解析結果から、ゲノタイプ6に属すが既知のサブタイプには属さない新型HCVが分離された。これらの新規HCVは、HCV新規命名法として最近提唱された分類法に従って、仮に6Xbと6Xcと命名した。 2.台湾島に10,000年以上前から生活している先住民族から分離されたHBVとHCVの遺伝的特徴を解析した。その結果、HBVはゲノタイプB2(78%)と最も多く、次いでゲノタイプD(22%)であった。HCVは、ゲノタイプ1b(78%)が最多で、2b(17%)、3a(5%)と続いたが、ゲノタイプ6は今回の調査では存在しなかった。ゲノタイプDに属すHBV全長ゲノム解析から、既知のサブゲノタイプDには明らかには属さないがD2により近縁であることが示されたので、仮にD2亜型(quasi-subgenotype D2)と命名した。この台湾アボリジン由来のD2亜型HBVは、ユニークなアミノ酸並列(Pre-S/S領域のN115;X遺伝子のP41;P遺伝子のS239, K/E295, V567, P708)を示した。この成績は、台湾アボリジンの移住の歴史を考察する上で興味深い。 3. HCVに関する研究に加えて、今東南アジアで流行し、エマージング疾患として重要である感染症も併せて調査した。昨年ベトナムでは麻疹が大流行したため、その分子疫学的特徴を解析した。その結果は、122人の小児患者からは全てゲノタイプD8に属す麻疹ウイルスが分離できた。興味あることに、N-450領域における塩基配列の解析から、3ヶ所のアミノ酸にユニークな配列(R442, S451,G452)が観察された。これらの遺伝情報は、遺伝子銀行に登録した。この東南アジアに流行する麻疹ウイルスの分子疫学情報は、WHOが勧めるワクチンによる麻疹制圧戦略に貢献すると信じる。
|