研究実績の概要 |
インドネシア政府は,2012年11月-2013年4月の間, 蚊忌避剤が含有した蚊取り線香(SR)のマラリア感染率低下効果を調べるために, 三日熱マラリア感染地域であるスンバ島で大規模フィールド介入試験を実施した. 本研究は, 我々が独自に発見したハマダラカ唾液タンパクAAPPを用いて介入試験期間の試験地域住民(SR群 vs Placebo群)のAAPP抗体価の変動を調べ,マラリア感染率との相関関係を解明することを目的とする. [材料と方法] ハマダラカ唾液タンパクAAPPならびに各種マラリア抗原(PfCSP, PvCSP, PfMSP1, PvMSP1)は大腸菌発現系を用いて精製し, ELISAの抗原タンパクとして使用した. 介入前(2012年10月), 介入中(2013年2月)ならびに介入後(2013年4月)に採取された血清サンプルを500倍に希釈した後, 抗原と反応させ各種IgG抗体価を検出した. [結果] 調査した全サンプルの抗AAPP抗体価の平均は雨季に入ってから有意に上昇し, 雨季が終わると有意に減少した. 各マラリア抗原に対する抗体応答も雨季が終わると減少傾向になった. マラリア感染者と非感染者で抗AAPP抗体価を比較したところ, 雨季を経た感染者で有意に増強していた. 他方, 熱帯熱マラリア原虫感染者では季節の有無に関わらず, 非感染者と比較して高い抗PfCSP抗体価と抗PfMSP1抗体価を保っていた. 蚊の多い沿岸部の住人と蚊の少ない山側の住人の抗体価を比較した場合, 蚊の多い沿岸部住人で抗AAPP抗体価が高い傾向にあった. しかしながら, 各期と各地域でSR群とPlacebo群のそれぞれの抗AAPP抗体価を比較した場合, 両群で有意な差は生じなかった.
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