研究課題
基盤研究(B)
予備的な研究によって媒介蚊内の原虫表面への発現を確認した7個の新規分子を対象とし、三日熱マラリア原虫の相同体が、伝搬阻止ワクチン候補抗原となる可能性を検討するために、タイ国のマラリア流行地をフィールドとして研究を行った。まず、伝搬阻止ワクチン候補抗原について、三日熱マラリア原虫の相同体(オルソログ)を標準株(Sal-1株)のゲノムDNAまたは流行地の患者株を用いて作製したcDNAを鋳型としてPCR増幅した。増幅した遺伝子産物をコムギ胚芽無細胞タンパク質発現用コンストラクトに挿入し、各組換えタンパク質の発現コンストラクトを構築した。コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いて各々の組換えタンパク質を大量合成した後に、其々をカラム精製した。組換えタンパク質を作製することが出来た2分子を用いて、ウサギを免疫し、其々の抗原に対する抗血清を作製した。作製した抗血清の抗原に対する反応性を、組換えタンパク質を用いたELISA法および蚊ステージ三日熱マラリア原虫を用いた間接蛍光抗体法によって確認した。作製したウサギ特異抗体をタイ王国に持参し、カンチャナブリのマラリア診療所において三日熱マラリアと診断された患者からインフォームドコンセントを得た後に採血した感染赤血球と持参した特異抗体を、それぞれ希釈倍率を変えたものを混合し、人工吸血装置(メンブレンフィーダー)を用いてマラリア媒介蚊に吸血させた。十分に吸血した蚊を選別して、約1週間室温で飼育した後に、蚊を解剖し、中腸壁に形成された原虫(オーシスト)数を顕微鏡下で算定し、特異抗体の伝搬阻止活性を評価した。抗血清添加群とコントロール血清添加群の間で原虫数の優位な差は認められなかった。
2: おおむね順調に進展している
初年度に予定していた候補抗原分子の組換えタンパク質の作製とそれを抗原とする特異抗血清の作製を、一部の候補ではあるが修了することができた。また、作製した抗血清と流行地の患者血液を混合して媒介蚊に吸血させる(メンブレンフィーディング法)による伝搬阻止ワクチン効果判定実験をタイ王国、マヒドン大学の協力のもとでカンチャナブリにおいて実施した。
本年度に標的タンパク質全長の組換えタンパク質の合成と抗血清の作製ができなかったものについては、組換えタンパク質の発現部位を変更するなどの工夫を行い、有効な抗血清が得られるように継続して作製する。本年度に伝搬阻止活性が認められなかった2分子については、ドメイン構造等の保持に注意しながら、いくつかの部分に分けて組換えタンパク質を作成し、各々を抗原としてウサギを免疫し、組換えタンパク質に対する新たな抗血清を作製する。作製した抗血清をタイのフィールドに持参し、引き続いて三日熱マラリア患者血液を用いた伝搬阻止活性の検定を行う。
本年度の未使用額289,758円は、研究の重点を海外のフィールド研究で利用するワクチン候補抗原に対する抗体作製においたため、予定よりも海外出張旅費の使用が少なくなったために生じた。翌年度の研究費4,489,758円は物品費に1,389,758円、旅費1,200,000円、人件費1,500,000円、その他400,000円として使用する。
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