研究課題/領域番号 |
25305010
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
沢辺 京子 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 部長 (10215923)
|
研究分担者 |
山内 健生 兵庫県立大学, 付置研究所, 准教授 (00363036)
佐々木 年則 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (10300930)
比嘉 由紀子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (40404561)
水谷 哲也 東京農工大学, 農学部, 教授 (70281681)
伊澤 晴彦 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 室長 (90370965)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 蚊媒介性ウイルス / マダニ媒介性ウイルス / RDV法 / 次世代シークエンス解析 / アルボウイルス分布図 / リスクマップ作製 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
東南アジアにおける節足動物媒介性ウイルスの自然界での多様性の実態把握を目標とし、蚊、ダニ類が保有する未知の病原ウイルスを網羅的・総合的に探索した。人獣に対する感染リスクを評価するためのリスクマップ作製に資する情報をできるだけ多く収集することが最終目的である。2015年度は、疾病媒介節足動物から分離された病原ウイルスを迅速に同定するために、培養上清からウイルスゲノム以外の核酸を効率よく除去し、ウイルス核酸のみを抽出する方法を開発した。この純化されたウイルス核酸を次世代シーケンス解析に用いることで、迅速かつ網羅的にウイルスゲノムの配列情報を大量に得ることが可能となった。 フィリピン捕集蚊より、蚊由来培養細胞C6/36細胞で強いCPEを示す2種類のウイルスを分離した。上記次世代シーケンス解析により約9kbの全ゲノム配列が決定され、未帰属の新規+鎖RNAウイルスグループであるNegevirusに属することが判明した。1種類は2013年に初めて報告されたNegev virus(フィリピンでは初検出、PL17株と命名)と同定され、もう1種類はNegev virusに比較的近縁な新規Negevirus(Bustos virusと命名)と推定された。Bustos virusのC6/36細胞における増殖は極めて速く、感染後6時間からウイルス粒子が培養上清中に放出され、16時間後にはプラークを形成した。遺伝子構造解析から3つのORFを有すること、ウイルス粒子構成タンパク質の解析からORF3に主要コートタンパク質がコードされていること、ウイルスRNAの解析から感染細胞ではORFをコードするsubgenomic RNAが合成されていることが明らかになった。 2015年4月にフィリピン・ルソン島及びミンドロ島においてマダニの分布に関する調査を行った。同地域内に生息している動物の体表にオウシマダニ及びクリイロコイタマダニの咬着を確認した。採取したマダニから、上記実験系によるウイルス分離を試みたが、ウイルスは分離されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疾病媒介節足動物から分離された病原ウイルスの迅速に同定することを目的とし、分離ウイルスサンプルからウイルスゲノム以外の核酸を効率よく除去し、ウイルス核酸のみを抽出する方法を開発した。この純化されたウイルス核酸を次世代シーケンサーを用いて解析することにより、迅速かつ網羅的に分離ウイルスゲノムの配列情報を大量に得ることが可能となった。 次世代シーケンス解析において、ウイルスゲノムは昆虫のゲノムと比較すると非常に短いため、リード数が得られ難いという問題点があるが、今年度は、ヒトなどゲノム解析が進んでいる検体からゲノム情報を除去する操作を確立することができた。 フィリピンにおけるマダニ調査に関しては、調査地でマダニの咬着が確認された動物はわずかに2種類と非常に少なく、得られたマダニの種類も2種類に留まった。調査地、時期も含めてさらに検討する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
1.これまでに分離できたウイルスサンプルについて、さらに次世代シーケンス解析を行い、ウイルス学的性状解析を進める。 2.マダニ調査について、地域と時期について、現地協力者と検討する。次年度はマレー半島での調査を計画している。 3.蚊由来ウイルスに関しては、データの蓄積とデータベース化を図るとともに、東南アジア地域のアルボウイルス分布図(Arbovirus distribution map)を作成し、さらにGIS、GPS機能、衛星画像等を使用して、人獣への感染リスクマップ作製を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
フィリピンにおけるマダニ調査に関して、2年続けて調査地の選定がうまくできなかったため、次年度はマレー半島での調査を計画した。
|
次年度使用額の使用計画 |
1.海外旅費:マレー半島における調査に関して、協力者と調整し調査を実施するための渡航費 2.謝金:マレー半島での調査協力に対する謝金およびその他費(試料・試薬類の送付代等) 3.物品費:ウイルス分離・検出に関わる試薬類ほか(特に、次世代シーケンサー関連試薬)
|