研究課題/領域番号 |
25305013
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 一路 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70294113)
|
研究分担者 |
丸山 史人 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30423122)
野澤 孝志 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10598858)
岡田 和久 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (40420434)
池辺 忠義 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (20333362)
小川 道永 国立感染症研究所, その他部局等, その他 (80361624)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | A群レンサ球菌 / ブタレンサ球 / CRISPR / スペーサー解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本・タイで流行するレンサ球菌感染症の原因菌であるA群レンサ球菌、肺炎球菌、ブタレンサ球菌を対象として、これらの新規流行株のこれまで行われている血清型分類に加え、CRISPRスペーサー領域の遺伝子配列を比較解析することにより、新規の流行を予測する方法を開発することが目的である.そのため、どのような外来性遺伝子が挿入されるかを予測する基盤を創出する本研究は、病態に応じた安全で有効性の高い治療を提供できることからも高齢者、患者の長寿命化、QOLの向上を見込むことができる.また、日本・タイにおける流行株の予測は、東アジアだけでなく世界的な流行の予測も可能となる可能性を秘めており、社会的にも重要な研究になると考えられる.本年度は,A群レンサ球菌およびブタレンサ球菌の解析を行った.A群レンサ球菌では259株の解析結果から,1)A群レンサ球菌では,スペーサー配列は,ほぼ全てがファージをターゲットとしていること 2)このスペーサー配列は,M型と非常に強い相関が見られることから,単にファージを排除しているのではなく,菌株で感染できるファージを規定していることが明らかとなった.また,S. suisでは,スペーサー配列については外来性遺伝子が主にターゲットになっているが,このスペーサー位置を,ファージ,CRISPR/Cas, MTnで競合的に取り合っていることが明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、日本・タイで流行するレンサ球菌感染症の原因菌であるA群レンサ球菌、肺炎球菌、ブタレンサ球菌を対象として、これらの新規流行株のこれまで行われている血清型分類に加え、CRISPRスペーサー領域の遺伝子配列を比較解析することにより、新規の流行を予測する方法を開発することに目的がある.A群レンサ球菌では,株数を大きく増やすことで,スペーサーと菌株の血清型の関連が見いだすことが可能となってきた.ブタレンサ球菌では,現在知られている全ての血清型の全ゲノム解析が終了し,その外来性遺伝子排除機構の特異性が明らかとなってきた.ブタレンサ球菌については,さらに今後タイからの分離株を広げることで,その詳細な解析が明らかにできると考えているが,同じレンサ球菌のグループであるA群レンサ球菌とは全く異なる生存戦略をとっていることが明らかとなった.A群レンサ球菌では,ファージを排除しているだけでなく,その種類を見分けて自身に必要なファージは取り込むことができるが,ブタレンサ球菌では,ゲノム上の単一のlocusをファージ,CRISPR/Casシステム,mobile genetic elementが競合的に取り合っていることが,比較ゲノム解析の結果から明らかとなった.
|
今後の研究の推進方策 |
A群レンサ球菌については,スペーサー配列を解析することで,これまでの血清型による分類に変わる新しい流行予測プロトコールが開発する道筋ができたと考えられている.CRISPR/Casシステムによって認識された外来性遺伝子の断片は,CRIPSR領域に保存されていくため,これよりも新しいスペーサー挿入された菌株が出現した場合には,それを速やかに検出すると共に,血清型別を行わなくても簡便に検出することが可能となると考えられる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度7~8月に前任地の東京医科歯科大学から京都大学に移転したために,研究室の移動の期間,実験室がまったく使用できずタイでのサンプリングとのそのサンプル処理に遅延が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
そのため,サンプリング時期を平成27年度9月に大規模に行うこととしている.
|