研究課題
Streptococcus suisの莢膜は白血球の食菌作用に抵抗するための重要な病原因子である。ところが、心内膜炎病変部から無莢膜株が分離される頻度が高いこと、莢膜の欠失により、本菌の血小板への付着能、バイオフィルム形成能および自家凝集性が亢進することを見出した。さらに無莢膜株がバイオフィルムを形成することで、接着能力が低い有莢膜株の足場となり、宿主体内での定着に寄与する可能性がin vitroの実験から示唆された。これらの結果は、有莢膜株と無莢膜株が宿主内に共存し、協働して病変を形成している可能性を示しているが、有莢膜株と無莢膜株が真に同一個体に共存するのかは確認されていなかった。そこで、本研究では、有莢膜株と無莢膜株が同一検体から分離されるのかを調査するとともに、分離された株の遺伝学的な背景を解析した。分離株はPCRでS. suisと同定し、血清型別用PCRにより血清型を推定後、型別用抗血清による共凝集反応により莢膜保有の有無を判定した。両表現型が分離された場合は、両表現型株間の遺伝学的近縁性を調べるため、各検体から有・無莢膜株を1株ずつ選び、MLSTによる遺伝型を決定するとともに、同一病変部由来の両表現型株間の遺伝学的近縁性を調べるために、全ゲノム配列を決定、比較した。その結果,70検体中61検体から本菌が分離され、そのうち33検体(54.1%)からは有莢膜株、2検体(3.3%)からは無莢膜株のみが分離された。一方、26検体(42.6%)からは有莢膜株と無莢膜株の両方が分離され、無莢膜株と有莢膜株が同一病変部内に高頻度で共存することが明らかとなったこれらの26検体由来の52菌株の全ゲノム配列をもとに、莢膜合成系遺伝子に変異が集中する領域があることを明らかとした.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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