研究課題/領域番号 |
25305015
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森田 公一 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (40182240)
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研究分担者 |
長谷部 太 長崎大学, 国際連携研究戦略本部, 教授 (20253693)
井上 真吾 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (00346925)
鍋島 武 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (30546859)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境政策 / 環境分析 |
研究概要 |
交付申請時の計画に従い、ケニア、ベトナム、フィリピンの研究協力者の支援を得て、申請者と分担研究者はそれぞれの地域において検体の採取を実施した。得られたサンプルは既知の急性ウイルス感染症について、既存の血清診断法、遺伝子増幅法等の手法によりウイルス検査を実施し、陰性のサンプルを適切に保存した。また、媒介蚊についても上記の3つの地域において検体採取を実施した。 サンプルは現地実験室において、ヒトスジシマカ培養細胞(C6/36)、サル細胞(LLC-MK2、SLAMノックインVero細胞)、複数のヒト単核球系細胞に接種して1週間培養し細胞変性効果を指標にしてウイルス分離を行った。細胞変性が確認された培養液は分離株として海外拠点に保存するとともに、一部サンプルは細胞培養液上清を濃縮して核酸を精製し、蛋白分画と合わせて長崎大学に搬送した。 蛋白分画は前処理した後、トリプシンで分解し日立社製のnLC/MS(質量分析計)にて1検体あたり約2万ペプチドのアミノ酸配列情報を得た。核酸分画はロッシュ社製の高性能シークエンサーにて解析し1株あたり20万~200万リード(1リード当たり、約400塩基)の遺伝子情報を得た。得られた情報をそれぞれ、既存のマスコット解析とBLAST解析にて既知のウイルスタンパク、遺伝子との相同性を検索した。また、データベースでヒットしないアミノ酸配列と遺伝子配列は別途保存した。 上記の、プロテオミクスとゲノミクスの未知配列データを順次、比較解析しており、現時点で、既知のウイルスに加えて、これまで報告の無いウイルスと思われる分離株も同定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱帯地域では蚊によって媒介される熱帯特有のアルボウイルスなど、ウイルス感染症が猛威を振るっている。しかし、ウイルス感染症と思われる症例でも、原因ウイルスを特定できない場合も多い。本研究は、熱帯地域とくに、ケニアやベトナムなどアフリカ・アジア諸国で発生する原因不明の発熱・脳炎症例および、自然界の蚊から同定不能のウイルスを分離し、プロテオミクスの情報とゲノミクスから得られる大量の遺伝子情報を比較解析することで1)未知のウイルスを迅速に同定する手法を確立する、2)アジア・アフリカの熱帯地域で調査を実施して、ヒトに病原性を示す可能性のある蚊媒介性ウイルスを網羅的に同定する、3)同定した新型ウイルスについて特異的診断法を創出して疾病の流行実態を明らかにする事を目的とする。 1)に関しては既存のホモロジー検索で既知のウイルス情報との相同性を検知できないサンプルについて、プロテオミクス情報とゲノミクス情報との比較解析により高い信頼性で未知ウイルス様配列の存在が確認できるようになった。現在スーパーコンピューターを用いたシステムに置き換える作業を実施している。2)に関してはフィリピンの蚊のサンプルから新ウイルスを発見して、国際誌に投稿するなど調査が進展している。3)については2年次の作業として計画しており、初年度に新たに発見したウイルスについては前倒しで作業を進め、ウイルスの高純度精製条件を決定した。 以上のように研究は計画にそって進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も当初計画にそって、研究を推進する。すなわち、初年度に実施したフィールドでのウイルス分離と長崎大学でのプロテオミクス、ゲノミクス融合による新規ウイルスの探索作業を継続する。加えて、初年度に発見したウイルスについてウイルス学的な解析を進めるとともに、ウイルス特異的な抗体検査と遺伝子検出技術を開発する。また、新規ウイルスについてこれまでに保存された検体についてその存在の有無を検索する。 ウイルス感染症のうち特に蚊媒介性ウイルス感染症の流行は気候変動の影響を受ける為、蚊の活動が制限され、患者発生が少ない場合も考えられる。我々の経験では今回調査する地域では毎年雨季に発熱疾患、脳炎が多発しており、その可能性は低いと考える。事実、初年度は計画通り研究が進展した。しかしながら万が一、患者発生が少ない状況であれば、過去にベトナム、フィリピン、ケニアにおいてヒトと蚊から分離され、未同定のままであるウイルス株が相手国機関に保存されており、これらのウイルス株を利用して研究を実施して、研究時間の無駄がないようにする。
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