ナイジェリア南東部はラッサ熱の発生が非常に多い地域の一つであり、その致死率も他の地域に比べて著しく高い。本研究では、その原因を究明するためにナイジェリア大学研修病院との共同研究でこの地域に蔓延するラッサウイルスの分子疫学的解析を行っている。 本年度は2015-6年にラッサ熱疑い患者から採取した血液14検体について引き続き解析を行った。RT-PCR検査には昨年度使用したプライマーセットに加えて、昨年度の次世代シーケンサー解析の結果に基づいて新たに準備した新規プライマーセットも用いて、ラッサウイルス遺伝子の検出を試みた。その結果、14検体中、旧プライマーセットでは3検体が陽性だったのに対して、新規プライマーセットでは6検体が陽性であり、新規プライマーセットがより正確に塩基配列の異なる幅広いラッサウイルス株を検出することがわかった。陽性例についてGPCコード領域の遺伝子配列決定と系統樹解析を行ったところ、今回解析した6株のGPC領域の塩基配列の相同性は93%以上であり、3株は2011年に分離された株と98%の相同性を示し、残りの3株はそれぞれ2005年、2008年、2013年に分離されたウイルス株と高い相同性を示した。これらの成績は、この地域で複数系統に枝分かれしたウイルス株が存在していることを示した。ただし、個々の系統のウイルス株のアミノ酸配列は高度に保存されており、抗体等の選択圧力を受けることなく長期にわたり自然界においてウイルスが同じ地域で維持されていることも示唆された。
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