研究課題/領域番号 |
25305017
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
出雲 周二 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 教授 (30143811)
|
研究分担者 |
有馬 直道 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30175997)
蓮井 和久 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 研究員 (70198703)
久保田 龍二 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70336337)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | HTLV-1 / 国際研究者交流 / 中国福建省 / HTLV-1関連脊髄症 / 成人T細胞白血病・リンパ腫 / 脳神経疾患 / 疫学 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、鹿児島大学医歯学総合研究科と、中国福建省沿岸に位置し、地域の疾患診療と研究を統括している夏門大学医学院との共同研究体制を構築し、HTLV-1研究やATLやHAMの診療に精通した日本側の専門家と厦門大学の血液内科、神経内科等、HTLV-1関連疾患の診療にかかわる臨床医、腫瘍病理医との交流を通じて、福建省沿岸部におけるHTLV-1関連疾患の実態を明らかにすることである。 中国側代表のxing教授が当研究センター外国人研究者として、若手研究員1名は外国人客員研究員として7月まで鹿児島に滞在し、HTLV-1関連疾患の診断法と研究手技を習得した。代表研究者出雲とXing教授がH26年5月に厦門を訪問し、HAM患者の受診が予想される、慢性神経疾患の診療を担う厦門中医院を訪問し、神経内科、リハビリテーション科の医師と懇談するとともに、HTLV-1関連疾患について講演し、共同研究体制を構築した。また、厦門大学医学院、中山医院神経内科を訪問し、研究打合せを行ない、HAM疑い例の診察を行った。2例の痙性対麻痺患者で、昨年度診察した患者と比較し、よりHAMに類似した臨床所見を示したが、最終的にHTLV-1陰性で、患者確認には至らなかった。しかし、神経内科スタッフのHAMの臨床像の理解が進んでいることを確認できた。さらに、福建省全域の献血業務を統括する血液センター「厦門市中心血駅」を訪問し、所長と懇談した。数年前よりHTLV-1のスクリーニングを実施しており、これまでに40検体余の陽性例があることの報告を受けた。本研究プロジェクトの趣旨を説明し、陽性検体の地域的分布とウイルスのサブタイプの解析が重要であることを示し、英文論文として発表することを勧めた。その後の解析で、陽性者の分布は地域差があり、福建省北部の寧徳市に多く、ウイルス亜型はサブタイプAに加えて、2例のサブタイプB(日本型)が確認され、国際紙に報告されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中国側代表のXing教授が7月まで1年間、また、張研究員も6ヶ月滞在してHTLV-1関連疾患の診断法と研究手技を習得した。H26年5月に昨年度に引き続き、厦門大学医学院、附属中山医院を訪問、中国側研究者の研究進捗状況の確認ができた。さらに慢性疾患の診療を担い、HAM患者が受診している可能性がある漢方医療の中核医療施設、厦門中医院との共同研究体制を構築できた。昨年度の訪問で中山医院中央検査部でHTLV-1抗体検査が導入され、80検体余りが検査され、2例が陽性で白血病であった事、血液内科主任がATLを経験したとの証言を得ていたが、今年度は献血業務を担当する血液センターを訪問し、すでにHTLV-1抗体スクリーニングが実施されており、陽性者が存在することを確認した。その陽性率と地理的分布、ウイルスサブタイプの検索を進言し、その後の解析で、陽性者の分布は地域差があり、福建省北部の寧徳市に多く、ウイルス亜型はサブタイプAに加えて、2例のサブタイプB(日本型)が確認された。今後、福建省北部の沿岸地域を集中的に調査し、HTLV-1関連疾患患者の掘り起こしをすすめる事ができる。
|
今後の研究の推進方策 |
26年度に中国で最初に献血のHTLV-1抗体スクリーニングを開始した厦門市血液センターを訪問し、抗体陽性率と陽性者の地域的分布について情報を得た。福建省北部の寧徳市に多く、ウイルス亜型はサブタイプAに加えて、2例のサブタイプB(日本型)が確認された。中山医院中央検査部の抗体検査結果とあわせ、今後、福建省北部の沿岸地域を集中的に調査するために、福建省北部の福建医科大学神経内科、血液内科との共同研究体制を構築し、HTLV-1関連疾患患者の掘り起こしをすすめる。また、ウイルスサブタイプについてもさらに検体数を増やし、詳細に解析することにより、サブタイプB(日本型)確認と、南九州、台湾、福建省でのウイルス比較をすすめる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、26年度中に日本からの複数の研究者の訪中による調査を計画していたが、厦門市血液センターの調査結果で福建省北部にHTLV-1抗体陽性者が集中する高侵淫地域があることが推定されたため、まず、北部の中心都市福州にある福建医科大学と厦門大学の共同研究体制を構築して、27年度にあらためて日本から複数の研究者が訪中し、寧徳市周辺を集中的に調査することとした。
|
次年度使用額の使用計画 |
福建医科大学と厦門大学の共同研究体制の構築をうけて、日本から複数の研究者が福建医科大学を訪問し、中国側研究者と共同で福建省北部のHTLV-1関連疾患患者の調査をおこなう調査研究旅費として使用する。
|