研究課題
基盤研究(B)
南アジアの島国・スリランカでは1990年代より、セイロン島中東部、中北部および周辺地域において、慢性腎不全が急増してきており、社会問題になっている。民族的な遺伝素因も関与するが、高血圧を始めとした生活習慣病が潜在的なリスクとなると考えられた。我々は現地の研究機関と共同してコホート調査を実施し、新規発症、病期進行に関わるリスク要因の検討を行った。また、これまで感染症への偏重から見逃されてきた生活習慣病の実態とその背景因子を評価した。遺伝要因の解析では疾患感受性要因をゲノムワイド相関研究により検討した。多発地域において症例、対照者を600名を募集し、マイクロアレイによる遺伝子多型のタイピングを行い、SLC13A3を特定した。SLC13A3は尿細管に発現し、腎障害のマーカー分子であることも報告されている。疾患の原因が病理学的には尿細管障害であり、遺伝的素因により修飾されることが考えられた。また一般集団において、高血圧症の有病割合が高く、その背景には塩分摂取量が極めて高いことが明らかとなった。今後、疾患の予後を改善するために、患者の血圧管理を徹底することが有効であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
患者背景調査、検体の分析を当初の予定の通り実施でき、遺伝素因の解明、慢性腎臓病患者を含めて当該地域における高血圧の状況を明らかにできた。
①コホートの追跡による新規発症、病期進行の観察 平成25年に続き、新規発症、病期進行を追跡調査する。検体検査により腎機能評価を行う。②既往疾患の治療歴、診療実態の調査臨床情報のデータセットをもとに血圧管理などが良好に行われているかを評価する。処方実態について、エビデンス、現地のリソースにもとづいて適切に行われているかを評価する。③コホートにおける生活習慣病スクリーニング 健常対照者を対象に継続してスクリーニングを行う。④元素摂取量調査 平成25年に得られた試料について、化学分析により栄養素、各種元素を評価する。特に、腎症を修飾すると考えられるヒ素曝露の現状について検討を行う。元素分析はICP質量分析法により測定する。
一部検体が現地フィールドから輸送が遅れたため、年度内での分析が完了しなかったため。次年度に当該検体を速やかに分析を行うため、残額を使用して分析を完了させる。全体の実施計画には影響はないと判断できる。
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J Occup Health
巻: 56 ページ: 28-38