研究課題/領域番号 |
25305021
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原田 浩二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80452340)
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研究分担者 |
小泉 昭夫 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50124574)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際保健 / 慢性腎臓病 / 疫学 / 環境衛生学 / 化学分析 |
研究実績の概要 |
南アジアの島国・スリランカでは1990年代より、セイロン島中東部、中北部および周辺地域において、慢性腎不全が急増してきており、社会問題になっている。民族的な遺伝素因も関与するが、農業従事、高血圧を始めとした生活習慣病が潜在的なリスクとなると考えられた。我々は現地の研究機関と共同してコホート調査を実施し、新規発症、病期進行に関わるリスク要因の検討を行った。 スリランカの研究者において、農薬曝露が腎障害の要因ではないかと指摘がされており、一部農薬が使用禁止にされるなどの動きがあった。そのため、発症者、健康成人の間で、農薬曝露の尿中バイオマーカーを評価した。一般的に農業従事者で多く使用されるネオニコチノイド系農薬7種について評価した。 尿試料1mLと回収率サロゲートを合わせ、珪藻土カラムにロードした。負荷後10分、標的分析対象をジクロロメタン25mLで2分間溶出した。溶出液を約10mLにロータリーエバポレーターで減少させ、さらに窒素気流下で約1mLにした。溶液を固相カートリッジに通した。10分間で、10mLの20%ジクロロメタン/アセトニトリルを用いてチューブに溶出した。溶液を窒素気流を用いて蒸発させ、30%メタノール水中に再溶解した。化学分析をLC-MS/MSにより行った。 アセタミプリドの代謝物、デスメチルアセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムが検出された。クロチアニジンはスリランカで農薬登録はなく、チアメトキサムから代謝されたものと推定された。これらのネオニコチノイド系農薬濃度はクレアチニン補正した場合、慢性腎臓病患者群で低下し、腎排泄型の薬物であると考えられた。クレアチニン補正を行わない場合、両群で有意な差は認められなかった。また日本人の集団の尿中濃度に比べても低く、スリランカの集団がネオニコチノイド農薬曝露が高いとは認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者背景調査、検体の分析を当初の予定の通り実施でき、慢性腎臓病患者を含めて当該地域における農薬曝露の状況を明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
①コホートの追跡による新規発症、病期進行の観察 平成26年に続き、新規発症、病期進行を追跡調査する。検体検査により腎機能評価を行う。 ②既往疾患の治療歴、診療実態の調査臨床情報のデータセットをもとに血圧管理などが良好に行われているかを評価する。処方実態について、エビデンス、現地のリソースにもとづいて適切に行われているかを評価する。 ③コホートにおける生活習慣病スクリーニング 健常対照者を対象に継続してスクリーニングを行う。 ④元素摂取量調査 これまでに得られた試料について、化学分析により栄養素、各種元素を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
帳尻合わせのための支出をしなかったため。(全体の実施計画に影響しない程度の少額である。)
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次年度使用額の使用計画 |
残額は少額であり、計画にそって次年度経費とあわせ使用する。
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