研究課題
南アジアの島国・スリランカでは1990年代より、セイロン島中東部、中北部および周辺地域において、慢性腎不全が急増してきており、社会問題になっている。民族的な遺伝素因も関与するが、農業従事、高血圧を始めとした生活習慣病が潜在的なリスクとなると考えられた。我々は現地の研究機関と共同してコホート調査を実施し、新規発症、病期進行に関わるリスク要因の検討を行った。スリランカの研究者において、ヒ素曝露が腎障害の要因ではないかと指摘がされていた。これまでに環境中、尿中ヒ素を、発症者、健康成人の間で評価してきたが、毛髪中ヒ素についてもスリランカの複数地域で評価した。ヒ素濃度は日本人などと比較して高くはなく、また地域的な差も有意ではなかった。遺伝的素因について、ゲノムワイド相関解析ではSLC13A3を見出しているが、稀な変異による影響がないか、全エクソン配列解析を行った。CKDuの8例とコントロールの8例のexomeシーケンシングにつづいて、CKDuの301例とコントロール276例における候補遺伝子座のサンガー法配列決定を実施した。相関研究は、最も高いオッズ比で1.74のSNPとして電位依存性KチャネルをコードするKCNJ10遺伝子に位置するrs34970857(c.658G> A/ p.V220M)を明らかにした。まれな変異は、先天性ネフローゼ症候群を引き起こすことが知られている遺伝子ラミニンベータ2(LAMB2)に同定された。 LAMB2の3変異はCKD症例でのみ見つかった新規バリアントであった。遺伝的調査では遺伝的感受性の存在を示した。この集団でCKDuに関連するいくつかのまれな変異体が存在する可能性も示唆された。
2: おおむね順調に進展している
患者背景調査、検体の分析を当初の予定通り実施した。
①コホートの追跡による新規発症、病期進行の観察 平成27年に続き、新規発症、病期進行を追跡調査する。検体検査により腎機能評価を行う。②既往疾患の治療歴、診療実態の調査臨床情報のデータセットをもとに血圧管理などが良好に行われているかを評価する。処方実態について、エビデンス、現地のリソースにもとづいて適切に行われているかを評価する。③コホートにおける生活習慣病スクリーニング 健常対照者を対象に継続してスクリーニングを行う。
帳尻合わせのための支出をしなかったため。(全体の実施計画に影響しない程度の少額である。)
残額は少額であり、計画にそって次年度経費とあわせ使用する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://hes.med.kyoto-u.ac.jp/SriLanka/index.html