研究課題/領域番号 |
25305023
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
塚原 高広 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (90328378)
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研究分担者 |
古澤 拓郎 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (50422457)
近藤 尚己 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20345705)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 経済政策 / 衛生 / 感染症 / 行動学 / 社会医学 |
研究実績の概要 |
治療可能な急性感染症は開発途上国小児の主要な死亡原因となっており、早期有効治療が可能な医療サービス提供および住民側の利用度向上が対策の根幹である。本研究の目的は、開発途上国の集団を対象として実証データを収集し、疫学と経済学の手法を併せて用いることで住民の選択行動さらには早期有効治療、疾病の有無に影響を与える因子を解明し、効果的な政策提言を行うことである。2014年11月にパプアニューギニア保健省医学研究審査会より調査許可および倫理審査承認を得て、2015年2月ー3月および5月-6月の2回にわたって人口動態調査、質問票調査、医療施設調査を行い実証データを収集した。また、成果を学会で報告し論文を発表した。研究実績の具体的な内容は以下の通りである。 (1)人口動態調査は、東セピック州ダグア地区の沿岸部に位置する22村落、約1500世帯にて行い、世帯名簿、住宅地図を更新した。さらに対象世帯の位置情報を含んだ電子地図の作製を開始した。(2)質問票調査では前年度に作成した質問票を一部改良して使用し、15歳未満小児のいる約1100世帯を訪問して病歴、病状経過、個人属性、世帯属性情報を収集した。(3)コミュニティでの採血調査は行わなかったが、血液サンプルとして医療施設で使用済みの検査キットを収集しマラリア原虫種の同定を行った。(4)医療供給施設であるヘルスセンター、エイドポスト、ヘルスボランティアより薬剤在庫状況を調査し診療記録情報を収集した。(5)2015年に収集した質問票データは2015年11月に入力作業が終了した。予備的な分析結果より考察を行い研究成果を学会で報告した。(6)2011-2012年に収集した既存データを用いて、混合ロジットモデルによる医療施設選択の分析結果に基づき政策提言を行った結果をまとめて原著論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き約1100世帯もの質問票調査を施行し実証データを収集することができた。また、計量経済学で用いられている鈴選択モデルの分析手法を住民の医療施設選択行動に応用し、既存データを用いて本研究の究極的な目的である政策提言につながる原著論文を発表することができた。これらのことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
従来から対象としている東セピック州のボイケン・ダグア地区で継続調査を行うとともに、隣接する地域であるウェワクタウン地区、およびサンダウン州アイタペ地区のコミュニティで追加的な質問票による調査を行う。また、医療供給者、医療行政担当者、医療協力関係者より情報収集を行う。コミュニティで身体計測と採血調査を行い、医療施設で使用済みのマラリア検査キットを収集しマラリア原虫の遺伝的解析を行う。さらに、マダガスカル、ソロモン諸島など、比較対象となる地域での予備的な疫学調査を行う。 これまでにパプアニューギニアにおいて収集したデータの解析を進め、医療施設選択のみならず早期有効治療に影響する因子についてさらなる成果が期待できる。研究成果を内外の学会で報告し査読付き論文発表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、2015年11月にパプアニューギニアで追加的な調査を行う予定であったが、これまでに収集したデータの入力作業に遅れが生じ追加で収集するデータについて昨年度中に検討が行えなかった。その結果、海外調査を延期することとしたため、基金を次年度へ繰り越して使用する必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年7-8月にパプアニューギニアで行う追加的な質問票による調査に使用する予定である。
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