研究実績の概要 |
ベトナムの高濃度汚染地域に居住する母親の出生児の胎児期および出生後の脳神経発達へのダイオキシン暴露の影響を明らかにすることを目的として、ベトナム共和国ビエンホア市の元米軍基地周辺10地区に居住する母親の出生児226名を対象として、ベーリー発達尺度と自閉症スペクトラム障害尺度(ASRS)を用いた2歳児健診を行い、発語が見られない、あるいは言語発達指数が低い児は、TCDD濃度が5.5pg以上の者に多かった。また、臍帯血中のテストステロンは、女児ではTEQ-PCDD/F2と有意な負の相関が認められ、男児ではTCDD濃度が5.5pg以上の者がそれ未満の者に比べ有意に低かった。 一方、脳波については、日本人の新生児35名の測定を行い、F1、C1、O1誘導の1から12HZ脳波のFFT absolute power と在胎週数や母親と児の身体計測値、アプガールスコアなどとの相関を解析したところ、いずれの誘導も在胎週数、子供の身長はpowerと正の有意な相関、母親の身長はO1以外の誘導で有意の相関を示した。F1のpower(5-7Hz)のみアプガールスコアと正の相関を示していた。なお、日本人の母乳中ダイオキシンは低く、TCDDは測定感度以下が多く、TEQ-PCDD/Fsも5pg-TEQ/lipid以下であった。 ベトナム汚染地域で78名の新生児の脳波測定を行ない、生後1か月時に採取した母乳中のダイオキシン測定をした。さらに27名の脳波について、日本人新生児の脳波と同様に解析し、在胎週数とこれらの脳波指標との関連性について検討し、いずれの誘導も在胎週数とpowerの間には有意な正の相関が認められた。ダイオキシンとの脳波との関連性については、男児でO誘導の4-7HzとTCDD,TEQ-PCDD/Fsとの有意な正の相関、女児で、C誘導の2-3Hzと負の有意な相関を認めた。
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