研究課題/領域番号 |
25305025
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 甲南女子大学 |
研究代表者 |
野村 亜由美 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 准教授 (50346938)
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研究分担者 |
山本 秀樹 帝京大学, 大学院公衆衛生学研究科, 教授 (50243457)
増田 研 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (20311251)
後藤 健介 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (60423620)
池田 光穂 大阪大学, コミュニケーションデザインセンター, 教授 (40211718)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 津波 / 認知症 / PTSD / スリランカ / ドミニカ共和国 / 高齢者 / 医療人類学 / 異文化看護 |
研究概要 |
本年度は主に、スリランカ及びドミニカ共和国の研究協力者らとの関係強化を図った。 スリランカでは、WHO現地支部の責任者、調査地MATARAの公立病院の精神科医らに研究の趣旨を説明し、問題と課題を共有した。調査地においては、津波後の健康状態を住民にインタビューしたり、アーユルヴェーダの医師から高齢者の認知症の発症率についてインタビューを行ったりした。毎回訪問時にインタビューをする高齢者(74歳女性)に限っては、前回訪問時(20か月前)と比較して健康状態も特に悪化しておらず、見当識障害などをきたしてもいなかった。調査地域は津波被災から8年経過しており街の復興は目覚ましい。住民も職を得て津波被災前と変わりなく生活している。津波による明らかな身体的精神的症状はいっけん見受けられないが、アーユルヴェーダの医師によると、津波被災前より認知症の発症率が上がっていると話す。その原因の一つが、住民が普段から口にしていたある薬草が津波によって無くなってしまったからだと話す。今後もフォローする。 ドミニカ共和国においては、現地のゲートキーパーに調査協力を依頼するとともに、前回インタビューに応じて下さった方々に、その後の健康状態や認知症について聞き取りを行った。さらに、ドミニカ共和国北西部にある移民共住地区において、現地の日系移民と日本から来た青年団との交流会に参加したり、首都にある日本人会主催の納涼会に参加したりと交流を深めた。こうした交流会を利用しながら聞き取りを行った結果、現在日本人会に所属する高齢者の中に認知症疑いの人は数名いるが、寝たきりになっている人は一人もいないことが分かった。これは前回訪問時(20か月前)の状況と同じである。認知症の疑いのある(前回インタビューを行った)人は、現在でもやはり地域社会との交流が少なく、かつ交流範囲が狭いことが要因のひとつであるという最初の仮説を裏付けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スリランカでは、初期の段階でインタビューを行った住民の半分近くがすでに居住地を移転しており、追跡調査することはできなかった。しかし、新たな研究協力者(現地の精神科医)を得ることによって、軽度の認知症から重度の認知症までさまざまな健康レベルの住民にコンタクトすることが可能になったと考える。 ドミニカ共和国で認知症に関するアンケート調査を行うことを計画していたが、現時点では認知症に罹患している移民者の数が少ないため、アンケート調査を個別インタビューに変更する必要性が示唆された。。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の調査を受け、発展的軌道修正として、下記の通り研究計画を変更することとする。 スリランカ:調査地区は同じ。研究対象者を被災地区の中から選ぶことにしていたが、先に加え、病院を受診している認知症疑いの患者や津波により精神的被害を受けたと診断された患者へのインタビューを行う。 ドミニカ共和国:日系移民60歳以上を対象に認知症のアンケート調査を行う計画であったが、対象年齢を上げても認知症疑いの者がいる確率が考えるため、フォーカスインタビューに変更する。 本年度は、東北大震災を経験した高齢者に対して、認知症やPTSDに関するインタビューを積極的に行うことで、上記3か国における認知症、PTSD、高齢化などの課題を見出したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
スリランカ、ドミニカ共和国、東北までの4人分の旅費ならびに宿泊費、現地コーディネーターの雇用や通訳、情報提供料の支払いなどに使用する。 次年度も引き続き、スリランカ、ドミニカ共和国、東北での調査を行う。調査にあたっては、本研究者の他に1~2名同行する。さらに調査アシスタントとして大学院生1名を雇用する。左記の調査を次年度は3回行う。
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