研究課題/領域番号 |
25305030
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
小久保 康昌 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 招聘教授 (60263000)
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研究分担者 |
葛原 茂樹 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 教授 (70111383)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 難病 / 国際研究者交流 (米国) / 国際情報交換 (米国) / 神経変性疾患 / 筋萎縮性側索硬化症 / パーキンソン症候群 / 紀伊半島 / グアム島 |
研究実績の概要 |
本研究では、紀伊半島とグアム島のALS/PDC の発症原因として、両地域に共通する環境要因と遺伝要因を明らかにするために、両地域の50年以上におよぶ研究成果および試料を元に、全ゲノム解析を含めた最新の研究手法を用いて検討する。26年度の成果としては、①紀伊半島の多発地区患者の疫学、臨床像を明らかにするために、200例以上の登録を完了し、さらに症例を追加登録中である。②患者レジストリーの構築:現在闘病中の患者10例を目標に順次登録中である。発症状況や自然歴、神経放射線データ、予後、死因といった臨床情報をプロスペクティブに集積し、今後予定される新規治療薬の臨床研究や医師主導治験の参加登録資料として活用する。③Dr. Carlos Ramel 訪問:2015年1月にグアムで唯一の neurologist で、ALS/PDC の診療にあたっている Dr. Carlos Ramel を訪問し、情報の共有と意見交換を行った。ここ10年ほどALSの新規患者は認められないこと、PDC 患者は引き続き発症者が存在すること、高齢発症の認知症症例が増加していること、などが判明した。④Dr. John Steele グループとの国際共同研究:両地域に共通する特異な網膜症 (pigmentary retinopathy) の疫学調査についての国際共同研究を計画中。⑤紀伊ALS/PDC の療養の手引き作成:患者および家族を対象とした療養の手引きを作成中で、29年度中の発行を目指している。⑥紀伊ALS/PDC のホームページ:随時、更新し、研究成果の公表に努めた。⑦グアム島と紀伊半島のALS/PDC に共通する疫学像および臨床像の変化ならびに生活環境の変化に関する、両地域の過去の研究資料の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環境要因 ①患者データベースの構築:現時点で、200例以上の登録を完了しており、データベースとしての条件は満たしている。②患者レジストリーの構築:現時点で、5例の登録を完了しており、順調に経緯している。③ 紀伊とグアムの実態調査:グアム ALS/PDC を研究、診療している複数のグループと国際共同研究を遂行中で、疫学、臨床像、生活環境、労働環境、食餌内容の変化、神経毒である BMAA 解析等について順次遂行中である。④紀伊ALS/PDC の療養の手引き作成:疾患の理解や日々の介護や生活、療養といった身近な問題についての手引きの作製を開始した。⑤紀伊ALS/PDC のホームページ:研究の進捗状況について、適宜情報公開を行った。 遺伝要因 ①遺伝子バンクの構築:紀伊とグアム両地域の患者由来遺伝子バンクを構築した。この両地域のバンクを用いて、②候補遺伝子解析:紀伊ALS/PDC の一部の患者に存在するC9orf72遺伝子変異等、一方で報告のある変異が他方にも存在するのかを検討する。③全ゲノム解析:次世代シークエンサーを用いて両地域の患者に共通する発症遺伝子の探索を実施し、残りの3年間で新しい原因遺伝子の同定を目指す。②③については、両地域の遺伝バンク試料の相互利用を確実なものにする。
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今後の研究の推進方策 |
環境要因 紀伊ALS/PDCにおいて構築した患者データベースおよび患者レジストリーのデータ解析に取りかかる。また、引き続きグアムを訪問し、ALS/PDCの現地での現在の実態と過去100年間の疫学、臨床像、生活環境、労働環境、食餌内容の変化を調査し、紀伊との比較を進める。また、紀伊症例におけるBMAAの関与について、質量分析計を用いて患者脳内のBMAAを測定する。今年度中に紀伊ALS/PDCの診療の手引きの原案を作成する。 遺伝要因 紀伊ALS/PDCに関する我々の遺伝子バンクとペンシルベニア大学にあるグアムALS/PDCの遺伝子バンクについて、まずは、双方の遺伝子バンクを統合し相互利用できるように準備を進める。両バンクの試料を元に、候補遺伝子解析および全ゲノム解析を順次進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
グアムの現地研究者との研究打ち合わせ及び意見交換の日程が、当初の予定よりも短期間となったので、海外渡航費が少なく済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、紀伊半島およびグアム島での現地調査を複数回予定している。また、米国本土において共同研究者との研究打ち合わせおよび情報交換を予定しており、国内外への旅費が必要である。さらに、資料整理等のための事務補助員を雇用する。
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