研究課題/領域番号 |
25305037
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
森山 啓司 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20262206)
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研究分担者 |
川口 陽子 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20126220)
稲澤 譲治 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (30193551)
田中 敏博 東京医科歯科大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50292850)
小川 卓也 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (50401360)
藤原 武男 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80510213)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯学 / 疫学 / 顎顔面形態 / モンゴル国 |
研究実績の概要 |
近年、社会経済的格差が疾患発症に影響を与えるとの報告が多くみられ、個々の健康増進のためには、社会経済的要因に焦点をあてることが有効であるとされている。そのため、個人を取り巻く環境を、社会経済的な観点から広くとらえることで、疾患発症メカニズムを明らかし、複数の疾患の共通リスク因子に対する政策を立案することが重要となってきている。また、気候、居住地域ならびに食習慣を含む生活様式が、下顎の形態に多様性を与えているとの報告がなされ、個々を取り巻く社会環境が顎顔面形態に与える影響について注目されてきている。アジアにおける同一人種間においても、それぞれの国における社会経済的要因を含む環境要因が、顎顔面形態の決定に影響を及ぼし、不正咬合の発症にも関与する可能性が考えられる。 1990年にモンゴル国は、社会主義経済から自由主義経済へ移行し、急激に経済状況が変化した。その結果、生活環境や食習慣だけでなく、社会における男女の役割や負担の割合も変化してきた。社会情勢に伴うこのような変化は特にウランバートル市などの都市部で顕著にみられ、社会主義国家から民主主義国家への移行を経験した若者がやがて成人し、次世代を産み育てる時代を迎え、これらの親子は、その激変する社会経済変化の影響を相互に受ける結果となっている。 そこで本年度は、経済発展の著しいモンゴル国ウランバートル市における思春期児童を対象に、社会経済的要因の一つである母親の学歴が不正咬合発症に与える影響について検討することとした。結果として、モンゴル人思春期児童を対象にした実態調査により、モンゴル国ウランバートル市においては高学歴な母親の子供ほど不正咬合の発症率が増加するという結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに施行した実態調査で得られた資料から、社会経済的要因の一つである母親の学歴が不正咬合に影響を及ぼすことを明らかにし、その結果を国際的な雑誌に掲載することができた。さらに、現在、不正咬合と口腔関連QoLとの関連性に関する知見について投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
得られた結果は、著しく経済状況が変化している国において、経済状況や生活様式の急変をもたらす社会経済的要因が、母親を介して子供の咬合発育に影響を及ぼした可能性を示唆しており、不正咬合発症メカニズムを明らかにするうえで貴重な基礎データになり得ると考える。現在、疫学的な手法をもとに得られた結果を用いて、不正咬合の予防策を立案・実施している報告は少なく、今後のアジア人の不正咬合の予防策のモデルとなる可能性がある。また、人々の関心は、う蝕の予防から咬合育成に移っており、先駆的に調査を行うことは学校・自治体にとっても意義が大きい。
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次年度使用額が生じた理由 |
モンゴル国へ渡航せず、実態調査で得られた結果に関する打ち合わせをメールにて行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究課題の最終年度となるため、モンゴル医科大学の共同研究者と実態調査で得られた結果に関して議論し、新たな研究計画立案のための打ち合わせを行う。
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